20 強敵、麒麟
不敗流。
それは600年前に『
幾多の戦場でまさに不敗伝説を打ち立てた最強の武術。
だが、目の前の麒麟はその不敗流の使い手の一人を打ち破ったのだという。
間違いなく、強敵だ。
今の私の力がどこまで通用するか――。
私はまずアリスたちに視線を向けた。
完全に動けないらしく、まるで石像のように動きを止めている。
どうやら会話もできない様子だ。
「【停止】か……すさまじいスキルだな」
決まれば、まさに必勝確定。
「俺とある程度のレベル差がある相手にしか効かぬが、な。対等や近いレベルの敵には通じない」
と、麒麟。
「俺と戦うのに値しない弱者を相手にするための技よ」
「彼らを弱者というのはやめてくれ」
私は麒麟に言った。
「彼らとて猛者だ」
「俺はそうは思わん」
麒麟が笑う。
「俺の発言を撤回させたくば、こちらで来い」
と、拳を突き出す。
「ならば――そうさせてもらおう!」
私は床を蹴って一気に間合いを詰めた。
手甲や脚甲のおかげで、全力を出しても体への負担が減っている。
「おおおおおおおっ!」
私は床だけでなく壁や天井を蹴って飛び回り、多角的な動きで麒麟を幻惑する。
「ほう、これは――」
三次元立体機動攻撃――【
天井が比較的低い位置にある場所でしか使えないという限定条件はあるものの、不敗流の高等奥義である。
「もらったぞ!」
麒麟の背後に蹴りを繰り出す私。
「――ふんっ」
だが、死角からのその一撃を麒麟はブロックしてみせた。
反撃の蹴りを私もブロックするが、
「くっ……」
威力を殺しきれずに吹き飛ばされる。
「【嵐竜】を見切るとは……」
「確かにお前は強い。だが攻撃の速さも重さもまだまだ足りんな……この麒麟を脅かすには、な」
本当に、強い――。
私は大きく息を吐き出した。
「本物のようだな」
私は小さく笑った。
喜びの笑みだった。
まぎれもない、本物の強者に出会えた――喜びだった。
「では、もう一つ先の領域に行くとしよう。私の、さらなる強さを――」
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