17 死霊術師の力

「さあ、行くわよ。我が友――」


 ナターシャが両手で印を結ぶ。

 そのたびに複数の指輪が同時に輝き、彼女の周囲にゴーストが出現する。


 この無数の霊たちは彼女の友であり、使い魔でもあった。


 ぐおおおんっ。


 白虎が全身を揺すり、氷の矢を放つ。

 どうやら氷系統の魔法を操るようだ。


「無駄よ、無駄無駄」


 ナターシャの前面に霊が集まり、盾のように変化した。


 ばぢぃっ!


 無数の氷の矢は、すべて『霊の盾』に弾き散らされる。


「霊には実体がない。形もない。変幻自在よ」


 ナターシャが微笑んだ。


 ふたたびバラバラになった霊たちがナターシャの周囲をたゆたった。

 しかも、その数はどんどん増えていく。


 いったい、どれほどの霊を召喚できるのか――。


「そろそろ、頃合いね」


 ナターシャは周囲に浮かぶ無数の霊たちを見て、言った。


 その間も白虎が散発的に氷魔法を放っているが、いずれも霊たちによって弾き返される。


「飛び道具は通じんか。ならば――」


 白虎はうなると、床を蹴って飛び掛かった。

 直接攻撃を仕掛けた白虎に対し、ナターシャは臆することなく、


「【死霊砲撃アンデッドキャノン】!」


 叫ぶ。

 無数の霊体が融合し、黒いエネルギー砲となって放たれた。


 こんな攻撃手段も持っているのか。

 驚く私の前で、漆黒の砲撃が白虎を飲みこみ、消滅させた。


 まさに、完勝だ。


 強い――。


「ふうっ、意外と手ごたえがないわね」


 ナターシャは軽く髪をかき上げながら、クールに告げた。



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