8 武神用魔導具

『それともう一つ――お前に渡すものがある』


 騎士の手に光があふれる。

 その光は私に向かって移動すると、弾けた。


「これは――?」


 私の両腕に輝く手甲が、両足にも脚甲がそれぞれ装着されている。


『お前はハンデを背負った状態だからな。その魔導具をつけていれば、少しは全盛期に近い戦いができよう。いわば「武神用魔導具」といったところだな』


 騎士が告げた。


「魔導具――」

『人類史上最高の魔術師が作り上げた逸品だ。使いこなせれば、お前はかつてのお前以上に強くなれる』

「使いこなせれば……か」


 手甲と脚甲はほとんど重さを感じない。


「そういうことなら、ありがたく受け取っておこう」

『うむ。さらなる強さを身に付けることを期待している』


 言って、騎士は背を向けた。


『では、いずれまた……若き「武神」よ』


 そんな言葉を残して、騎士は消えた。




 次の瞬間、私は元の場所に戻っていた。

 体を見下ろすと、手甲と脚甲はそのままだ。


「さて、と」


 元の場所に戻った以上、やることは一つ。


 フロアボス撃破である。


「再開といこうか」


 私はフェニックスに向き直った。

 とにかく速度で圧倒するのがベストだ。

 相手に少しでも触れれば、私は大やけどを負う。


 だんっ!


 床を蹴って、走る。


「これは――!?」


 体が、今までより軽く感じる。


 脚甲の、効果なのか――?


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