7 案内人


『楽園』と呼ばれる数多の英霊が集う場所。

 そこに続く扉がある。



「転生者……だと」


 そう、私は確かに99歳の老人から、今の体へと生まれ変わった。

 だが、それを知っているらしき彼(?)は何者だ……。


「君は一体……? それにここはどこだ――」


 私は戸惑いを隠せなかった。


 先ほどまでの塔内とは明らかに違う風景だ。

 理由は分からないが、別の場所に転移したのか、それとも異空間にでも飛ばされたのか。


 そして――目の前の人物は誰なのか。


『説明のために、お前を一時的に異空間に呼び寄せたのだ。それと、私が誰なのかはどうでもよい。ただの「案内人」だ』


 騎士が言った。


「案内人……」

『そう、英雄たちの「楽園」の、な』

「楽園――」

『古今東西の英雄たちの霊――いわば「英霊」たちが集う聖地があるのだ。そこは通称を「楽園」という』


 騎士が語った。


『お前ならば、いずれその地にたどり着けるかもしれぬな』

「『楽園』とやらには何がある?」

『強き者が集う場所。それだけだ。だがそれこそが――お前にとって何よりも価値のある場所ではないか?』

「私自身の強さを磨ける場所、ということか」

『その地で何を為すのか、為したいのかは、英霊によって違うだろう。あるいは現世に一時的に降臨し、生ある者に力を貸す者もあろう。あるいは「楽園」内にて生前の探求を続ける者や、ただ安らぎを得る者……千差万別だ』

「私がそこにたどり着けなかったのは、私では『英霊』の資格を満たせなかったから、ということか?」

『生前の功績から考えれば、お前は間違いなく「英霊」だ。だが、現世に戻ったのであれば、なんらかの理由があるのだろう』


 騎士が言った。


『それを解き明かすことができれば、今度こそ「楽園」に到達できるかもしれぬ』

「ふむ……『楽園』やあらゆる時代の英霊たちには興味があるが」


 私は笑った。


「まずは現世のもめ事を解決してからだな」

『今のお前は若い。急ぐことはあるまい。現世の使命と、いずれの楽園行き――それぞれを追い求めるのもよいであろう』

「忠告痛み入る」


 私は一礼した。


「で、君の要件はなんだ? 説明のためにこの空間に呼び寄せたと言ったな。私に説明をする理由は?」


 言いながら、私は身構えた。


 まだ彼が敵ではないという保証はない。

 それに、彼からは強者の雰囲気が伝わってくる。


 もしも敵ならば、決して侮れない相手だ。


『そう警戒するな。少なくとも敵ではないぞ』


 騎士が淡々と言った。


『私はただ強き英雄を育て上げ、見守り、やがて「楽園」へと案内する存在だ。最初に言ったであろう? 案内人だ、と――』

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