9 さらなる進化を

 床を蹴る。

 体が加速する。


 フェニックスが放つ炎や雷撃を、私はやすやすとかいくぐった。


「……なるほど」


 体への負担が少なくなっている。


 手甲脚甲は私のパワーやスピードを上げるためのものではなさそうだ。


 おそらく『全力を出したときの体への反動』を和らげるものだろう。

 ならば――もっと『本気』に近づけても、体が耐えられるかもしれない。


「本気度――五割でいくか」


 どんっ!


 床を踏み抜く勢いで蹴りつけ、さらに加速する。

 フェニックスは、もはや私の動きが見えないのだろう。

 見当違いの方向に炎や雷を乱射していた。


「スピードをここまで上げても、体への負担がほとんどない……!」


 私は手甲脚甲の効果を実感していた。


「次は攻撃面のテストだ」


 フェニックスの懐に飛びこむと、正拳突きを放った。


 ごおおおおおおっ!


 風圧が渦を巻き、竜巻となってフェニックスの中心部を打ち抜く。


 一撃、だった。


 胴体を貫かれたフェニックスは倒れ、やがて無数の赤い粒子となって消滅した。


「ふうっ」

「な、なんだ、今の動きは――」


 シュナイドが呆然とした様子で歩み寄る。


「ウィナスで俺と戦ったときより、数段速い――」

「私にも、まだまだ向上の余地がある、ということさ」


 私はニヤリと笑った。

 心の中に高揚感が沸き上がる。


 この手甲と脚甲を使いこなし、さらなる上を目指していこう――と。


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