5 フロアボス

「鳳凰……か」


 フェニックスとも呼ばれる上級のモンスター。

 その全身は赤い炎に覆われていた。


 当然、拳や蹴りを直接撃ちこめば大やけどを負う。


「武闘家には相性が悪い敵でしょ。ここは私がやるわ」


 と、アリスが進み出る。


「いや、フェニックスは炎や雷属性の攻撃に強い耐性を持っている。相性というならアリスにとっても、あまりよくない相手だ」


 私が言った。


「え、そうなんだ……むー」


 頬を膨らませるアリス。


 シュナイドは私と同じく物理攻撃オンリー。

 あとはナターシャだが……。


「私にとっても相性が悪いな。私の死霊術で呼び出すゴーストやゾンビなどは、フェニックスの操る炎に弱い」


 と、ナターシャ。


「つまり、全員にとって相性が悪い相手というわけだ」

「なるほど。では、私がやろう」


 私が進み出た。


「いや、あいつの体は炎に包まれてるんだし、ガーラの攻撃は通じないでしょ? やけどしちゃうよ」

「確かに、ちょっと熱そうだな」


 警告するアリスに私は苦笑を返した。


「ただ……相性が悪いなら悪いなりに戦い方はあるさ」

「……ガーラ殿の戦い、拝見させていただく」


 シュナイドが恭しく言った。




「では、始めようか」


 私はフェニックスと向かい合った。

 本来なら問題なく倒せる相手だと思うが、一つ問題があるとしたら――。


「やはりこの体だな」


 今の、十歳の少年の体でどこまで戦えるか。


 今後、強敵である魔族ラシェルやラーガードと戦ううえで、避けて通れない問題だ。


「その試金石に、君を使わせてもらうぞ、フェニックス」

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