4 塔に入る

 闘神の塔――。


 全部で六十のフロアがあるという、この長大な塔に私たちは挑むことになった。

 目的は塔内のどこかにあるというマジックアイテム。


 一階を進むと、さっそくモンスターが押し寄せてくる。


「ふんっ!」


 が、シュナイドの斬撃がそれらをことごとく吹き飛ばした。

 やはり――強い。


「以前より膂力が増しているな」


 シュナイドがほとんど一人で活躍し、私たちはあっという間に十階までやって来た。


「ほらガーラ、私の手をしっかり握っててね」


 アリスが私の手を握る。


「それだと、とっさのときに動きづらいのだが……」

「迷子にならないようにと思って」

「いや、そんな子どもみたいな……」

「子どもでしょ、あなたは」


 アリスに見つめられ、私は思わず苦笑した。

 ちょうど敵を倒し終えたシュナイドが、私の元に歩み寄った。


「ところで――アリス、シュナイド、君たちはあれからどうしていたんだ?」


 私は二人にたずねた。


「気配やちょっとした身のこなしで分かる。二人とも以前より力を増しているな」

「えへへ、分かるー? 私なりにトレーニングをね」


 アリスが自慢げに胸を張った。


「雷撃の威力はかなり上がったよ」

「俺は新たな技を開発していた」


 と、今度はシュナイド。


「さっきの戦いはパワーで押し切っただけだが……今の俺の真価はあんなものではない。塔内であなたにお見せできればよいのだが」

「楽しみだな」

「よければ、弟子入りの件……考えていただきたい」

「まだ諦めてなかったのか……」

「当然だ。俺はあなたほどの武人を見たことがない。ぜひ教えを請いたい」

「ふふ、モテモテじゃない、ガーラ」


 アリスがからかう。


「しかし、前にも言ったが、私は弟子を取らない主義だ」

「無論、それは聞いているし、一度は納得もした。だが……やはり駄目なのだ。諦めきれない。俺はもっと強くなりたい――」


 シュナイドが目をキラキラさせて語る。


「そのための道を――あなたにお示しいただきたい。どうか、どうか……」


 とにかく彼は低姿勢だった。


「……ふむ。音に聞こえた『竜殺し』がこんな少年に頭を下げるのか」


 ナターシャが私を見つめる。


「興味が湧いてくる……君の力、この塔の中でぜひ見てみたいな」


 ヴオオオオオオオッ!


 そのとき、前方から雄たけびが聞こえてきた。


 ぞくり、と背筋が粟立つ。

 強力なモンスターが控えている証拠だ。


 私たちは前方に進んだ。


 上階への階段の前に、巨大なシルエットが立ちはだかっていた。


 最初のフロアボスが現れたようだ。


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