19 闘神の塔


「一つだけ――こちらから彼を呼び寄せられる方法がある」


 ギルド長が切り出した。


「ただし、相応のリスクがあるが」

「リスク、と言うと?」

「彼はとあるマジックアイテムを求めている。が、それが安置された場所は非常に危険で、ルーファスですら簡単には手を出せないのだ」


 説明するギルド長。


「つまり、そのアイテムを取って来れば、興味を持った彼の方から訪れてくれる、と?」


 私はギルド長に確認した。


「かもしれない。その可能性は高い、と私は踏んでいる」


 うなずくギルド長。


「アイテムがある場所――その塔は普段は結界に覆われているのだが、不定期にその結界が緩むのだ。そして……半日ほど前に結界が緩む時期に入った。おそらく数日はこのままだろう」

「塔に入るチャンスは数日だけ、というわけだな?」

「うむ。そこは闘神レム・フォルスの塔――と呼ばれている」

「闘神、か」


 私も武神という二つ名を持っていた。


 その武神が闘神の塔に挑むというのは、なかなか面白い。


「行ってこよう。アイテムを手に入れたら、彼を呼び出してもらえるか?」

「ふふ、そのときは何もしなくても、彼の方から寄って来るだろう」


 ギルド長が笑った。


「ただし、塔の攻略は手ごわい。腕利きの魔術師や戦士がそろわなければ叶わんぞ」

「心配無用だ。私は強い」


 ニヤリと笑う私。


「他に何人かのメンバーを選んで攻略してこよう」

「ちょっと待て。君一人で話を進めるな。私も行くぞ」


 魔術師の一団から、若い女の魔術師が手を上げた。


「この中では、私の実力がもっとも高い」

「ほう? 一番若く見えるが……」

「君のような子どもに言われたくはない」


 ふんと鼻を鳴らす彼女。


「ナターシャだ。『死霊の操り手』と呼ばれることもある」


 彼女が名乗った。

 二つ名からすると……おそらく死霊術師か。




「話は聞いたわよ、ガーラ」

「久しいな」


 ギルド長の部屋を出て、ギルド内のホールに行くと、そこには二人の人物が待っていた。


 一人はアリス。

 そしてもう一人は――。


「シュナイド……?」


 ウィナス王国武術大会で出会った猛者、『竜殺しのシュナイド』だ。


「私たちも」

「同行するぞ」


 二人は口々に言った。







※次回から第5章になります。ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!

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