16 ルーファスを訪ねて


 私は、以前ルーファスに出会った場所に来た。


 ……だが、そこに彼の姿はない。


「彼はどこだ――?」


 探していると、前方に魔術師の一団を見かけた。


 全部で十数人。

 いずれも魔術師のローブ姿だ。


 もしかしたら、彼らがルーファスの行方を知っているかもしれない。

 同じ魔術師だし聞いてみよう。


 私は彼らの元に歩み寄った。


「一つたずねたい。この辺りでルーファスという名の魔術師を見なかっただろうか? ご存じであれば教えていただけるとありがたい」

「ルーファス様? お前もあの方を探しているのか?」

「見たところ魔術師には見えないが……」


 と、魔術師たちが私を見る。


「私は魔術師ではなく武闘家だよ。彼の友人だ」


 答える私。


「ルーファスに用があって来たのだが……以前に見かけた場所で、彼の姿が見当たらないのでな」

「ルーファス様は一か所に留まる方ではない」


 と、魔術師の一人が教えてくれた。


「あの方は気の向くまま、世界中をさ迷っておられる」

「我らはあの方から教えを請いたくて、ここまで来たのだ。この一帯でルーファス様を見かけたという情報を得て、な」

「だが遅かったらしい。すでに去ったあととは……」

「ルーファスは放浪癖があるのか……」


 知らなかった。

 そうすると、彼に会うのは簡単ではないかもしれないな。


「彼の行く先に心当たりはないだろうか?」

「俺たちにも分からない。それで毎回苦労するんだ……」


 魔術師たちは困り果てている様子だった。


「一つだけ――心当たりと言えなくもない場所が」


 誰かが思いだしたように言った。

 まだ若い女魔術師だ。


「ほう? それは?」

「魔術師ギルドさ。あの方は、たまにギルドに立ち寄るそうだ」


 言って彼女はにっこり笑う。


「あてもなく探すより、そこに行った方がいいかもしれない。私たちは今から行くつもりさ」

「では、私も同行してもいいだろうか?」

「構わないよ」


 というわけで、私は魔術師たちの一団に混じり、魔術師ギルドに行くことになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る