12 武神VS魔族ラシェル3


 黒い仮面と軽装鎧をまとった黒騎士――。

 それがラシェルが変身した姿だった。


 槍を手に超速で突進し、嵐のような連撃を見舞ってくる。


 強い――。


「なんという強さだ……!」


 私はラシェルの前に後退を強いられた。


『魔闘モード』を解放したラシェルは、異常な強さだ。

 かつて戦った『黒の魔王』に迫るほどの強さかもしれない。


 しかも、こいつの上にはまだラーガードとやらがいるのだ。


「魔王を倒したからと言って、まだまだ平和な世の中にはならないか」


 ため息をもらす。


「だが……だからこそ、君は私が食い止める」

「ほう、まだ闘志を失っていないようだな。力の差を見せつけられても」


 ラシェルが淡々と告げる。


 彼は勝ち誇る様子もなく、ただ静かに、どこまでも落ち着いて攻撃を続けてくる。


 まったく隙がない。


「このままでは勝てない――か」


 ……どうする?


 私は迷った。

 今のまま戦っても、殺されるだけだろう。


「ならば――使うか……!?」


『今以上の』力を。


 私は全力を出すのをセーブしている。

 現在の、十歳の少年の体では私の全力に耐えられない可能性が高いからだ。


 本気の拳を繰り出せば腕が壊れるだろうし、蹴りを繰り出せば足がちぎれるかもしれない。

 だが、やらなければやられる――。


 たとえ危険な賭けでも……乗るしかない。




「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」




 咆哮する。


 全身の筋肉が盛り上がる。


 髪が逆立ち、体から吹き上がる闘志は目に見えるほどの銀の輝きとなってあふれ返る。


「貴様――その力は……!」


 ラシェルの表情が変わった。


「ただの人間ではないな……まさか転生者か……!?」


 転生者――?


 彼の言葉に引っかかりを覚えた。


 確かに、私は転生した。


 だが、何か違う。

 彼の言葉の響きは、単純に私の転生を指しているのではなく、もっと別の何かを示しているような――?


 いや、今はゆっくり考えているときじゃない。


 このまま渾身の一撃を叩きこみ、この勝負に決着をつける!

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