11 武神VS魔族ラシェル2


「『黒の魔王』様が遺した逸品を、ラーガード様は俺にくださった。俺こそが、この槍を最も使いこなせるだろうと――」


 三又の槍を高々と掲げるラシェル。


 その構えは雄大にして華麗。

 そして、まったく隙が無かった。


 こちらからは、打ちこめない――。

 私は先制攻撃用から、カウンター用の構えへと変更する。


 先の先が取れないなら、後の先を取るまでだ。


「ふん、カウンターか。やってみるがいい」


 告げて、地を蹴るラシェル。

 一瞬にして槍の間合いまで侵入し、


 ヴオンッ!


 うなりを上げて水色の槍が振り下ろされる。

 同時に、周囲に衝撃波が荒れ狂った。


 前方の空間が歪み、大きな亀裂が走る。


「空間が裂けた――」

「どうした、臆したか!?」

「まさか」


 私はニヤリと笑う。


「不敗流――【撃閃】!」


 私は拳の一撃を放ち、空間を歪ませた。

 空間断裂の一撃が、その歪みに巻きこまれ、威力を散じる。


「……ほう、貴様も空間を変質させるほどの攻撃を操るか」

「私だけではない。かつての私の仲間にも同レベルの攻撃を繰り出す者はいた」


 告げて、私は追撃の蹴りを放つ。

 ふたたび空間が裂け、ラシェルは跳び下がった。


「人間を、あまり舐めるなよ」

「……舐めてはいない。だが、俺は貴様を過小評価していたようだな。反省させてもらう」


 ラシェルの表情がわずかに険しくなった。


「本来ならこの力の行使は許されていないが……やむをえん」


 表情の変化に合わせ、彼がまとう雰囲気そのものが変わった。

 ぞくり、と背筋が粟立つ。


「貴様には、全力を持って相手をしよう――」


 ラシェルの全身が紫色の輝きに覆われた。


「【魔闘解放フォル・ディーヴァ】」


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