13 一撃の行方


「おおおっ」


 私はラシェルに向かって突進した。


 全盛期の最強の力――。

 それを貧弱な少年の体で再現しているのだ。


 長くはもたない。

 ほどなくして体のどこかが負荷で壊れるだろう。


「そうなる前に決着をつける!」


 私は最短距離でラシェルに向かった。


 小技は必要ない。

 突進から最強の一撃を叩きこむ。


 シンプルな攻撃で十分だった。


「受けてやろう」


 ラシェルが三又の槍を構えた。


 その刃先が黒い魔力のオーラに包まれる。

 奴もまた最強の一撃で迎え撃とうというのか。


「――面白い」


 我知らず笑みがこぼれた。


 互いに最強の力をぶつけ合う。

 武人として、これほど血が騒ぐ状況はあるまい。


「はああああああああああっ!」


 私とラシェルの雄たけびが唱和した。

 私が拳を繰り出し、ラシェルが槍を突き出す。


 拳と三又の刃が交差する――。




 轟音とともに、私とラシェルはともに吹き飛ばされた。


 互いの攻撃がぶつかり合った衝撃でクレーターができていた。

 生じた破壊エネルギーの余波で、周囲がズタズタに裂けている。


「なるほど……貴様は危険だ」


 ラシェルが大きく跳び下がる。


「ラシェル……?」

「貴様の強さは、人間にしては異常すぎる。その気配だけで分かる――ラーガード様に報告する必要がある」


 と、ラシェル。


「ここは退かせてもらうぞ」


 言って、ラシェルは光弾を放った。

 その先にいるのは――ガリオンだ。


「があっ……!?」


 一撃で消滅するガリオン。


「仲間を容赦なく殺すか……」

「仲間? 人間ごときに敗れるような役立たずを仲間とは呼ばん」


 ラシェルが言った。


「覚えておこう。人間にも猛者がいることを。そして貴様も覚えておけ」


 振り返った魔族の表情に、初めて――殺意が浮かんだ。


「次に会うとき、貴様は必ず俺が殺す」

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