17 黒い隕石から出現したもの

「あれは!」


 私は上空の一点を見据えた。


 雲一つない青空に突然浮かび上がった、黒い点。

 いや、それは隕石だ。


 炎をまとった黒い隕石がまっすぐ王都に落ちてくる――!




 ど―……んっ!




 隕石は王都のはずれに落ち、すさまじい衝撃波が吹き荒れた。


 私はすぐに駆けだした。


 全速力で走り、数分で現場にたどり着く。


 周囲にはクレーターができていたが、幸いにも建物がほとんどない場所で、死傷者もいなさそうだ。

 前方数百メートルの地点に、黒い隕石があった。


 ばぐんっ、と隕石が割れる。


 その内部から――。

 二人の男が現れた。


 当然、ただの人間ではあるまい。


 おそらくは……魔族。


 一人は小柄な男だった。

 背筋が凍りそうなほど怜悧な顔立ちの美しい青年。


 もう一人は大柄で太った男だった。

 こちらはいわゆる『コワモテ』で筋骨隆々とした体格の青年だ。


 二人はともに黒い軍服のような衣装を身に着けていた。

 胸には階級章らしきものが見える。


「どこかの軍……か?」


 たとえば、魔王や高位の魔族が率いる軍――?


「ここが人間界か」


 小柄な魔族が言った。


「ヴァゼルディーヴァ様でさえ、ここを落とせなかったというが……」

「冗談だろ? カスみたいな連中しかいないぜ?」


 太った魔族が笑う。


「大方、ヴァゼルディーヴァ様と戦った英雄たちは、もう死んでるんだろ。人間の寿命は短いからな」

「確かに……平和な時代なら戦士の質が落ちていても不思議はないな」


 うなずく小柄な魔族。


「とりあえず――こっちの世界での魔法の試し撃ちといくか、へへっ」


 太った魔族が右手を突き出した。

 人が大勢いる場所まで魔法弾を飛ばすつもりか!?


「まずい――」


 私は慌てて走り出すが、さすがに距離が遠すぎる。


 ごうっ!


 放たれる魔力弾が、周囲を吹き飛ばした。


「不敗流――」


 直接の拳打が間に合わない以上、これしかない。


「【牙弾がだん】!」


 突き出した拳が突風を生む。

 その突風が魔力弾を捕らえ、巻きこみ、上空へと吹き飛ばした。


 どー……んっ!


 爆風が周囲の地面をえぐり、小型のクレーターを作り出した。

 上空で爆破しても、なおこの威力とは。


「誰だ!?」

「君たちこそ、誰だ。突然、人間の世界を訪れて、随分と乱暴をしてくれるな」


 私は二人の魔族を見据えた。


「はっ、死にたいらしいな、ガキ! 俺は子どもが相手でも容赦なく殺すぜ」


 太った魔族が叫んだ。

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