15 メイド美女メリル


 紫色の髪をショートヘアにした眼鏡美人だった。

 背はスラリと高く、身に着けているのは白いカチューシャと紺のエプロンドレス。

 典型的なメイド服である。


「メリル、お前はいつもいつも……いきなり出てくるのを止めろと言っているだろう!」

「気配を殺さなければ尾行できませんもの」


 ルナリアが注意すると、メイド美女――メリルはこともなげに言い返した。


「尾行などしなくていい」

「そうしたら、ルナリア様はお一人で勝手に出歩いてしまうじゃないですか」


 メリルがルナリアを軽くにらむ。


「今もこうして異性と二人っきりですよ?」

「ガーラはまだ子どもだぞ」

「その割に意識してらっしゃるようですけど? 彼、美少年ですしね」

「うっ……そ、それは……」


 ルナリアがなぜか視線を逸らした。

 頬も赤くなっている。


「まったく、私なんて彼氏いない歴イコール年齢なのに、うらやまし……じゃなかった、とにかく王女ともあろうお方が、結婚前に異性と二人っきりで会うなどもっての外です」


 メリルが力説する。


「――で、あなたは何者ですか?」


 スッと目を細めて、私を見つめるメリル。


「ただの子どもではないですよね」

「ただの子どもさ」


 私は笑った。


「名はガーラ」

「ガーラ……? 炎竜王から我が国を救った英雄と同じ名前ですが……まさか」

「ああ、本人だ」

「こんな線の細い美少年が……じゅるり」


 なんかヨダレを垂らしているんだが……。


「確かに彼は美少年だが……ヨダレを拭け、メリル」


 ルナリアが苦笑した。


「パレードで遠くからお見掛けしましたが、こうして直接お会いできるとは光栄です」


 メリルが恭しく頭を下げた。


「いや、かしこまらないでくれ。過度な礼は不要だ」

「恐れ入ります」


 私の言葉にも、メリルはますます恭しい態度を取るばかりだった。

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