12 魔族の脅威を語る
「で、貴様の要件とはなんだ、ガーラとやら」
カタリナが私にたずねた。
「ああ、魔法戦団の長になら、ぜひ話したい」
と、私はさっそく説明を始めた。
「ほう? 魔族の大侵攻が?」
私の説明を聞いたカタリナが眉をひそめる。
「ああ、そう遠くないうちに世界が危機にさらされるかもしれない。数十年前、『黒の魔王』が世界を恐怖に陥れたときのように――また、多くの人が犠牲になるかもしれない」
私は語った。
「それを防ぐためには一人や二人の猛者だけでは足りない。かつての魔王大戦では『破砕騎士ゴル』や『青の竜騎士ゼルス』をはじめとした英雄たちが魔王軍に立ち向かったが、やはり少数精鋭では限界がある」
「つまり各国に魔族への防備体制を敷いてほしいというわけだな」
「その通りだ。発端となったウィナス王国武術大会に出場していたメンバーが何人か、各国にそれを伝えに行っている。私もその一人だ」
「武術大会か……」
「私はその大会で優勝した。どうか、優勝者の言葉として聞いてもらえないか」
『10歳の子ども』の言葉では真剣に聞いてもらえないかもしれない。
だが、『ウィナス王国武術大会の優勝者』の言葉なら、話は別だろう。
「分かった。紹介状も確認したが、本物のようだ。貴様には、我が国の内務大臣に会ってもらう。そこであらためて先ほどの話を説いてくれないか。私も同席しよう」
カタリナが言った。
それから私に対して一礼し、
「よく我が国に来てくれた。貴重な情報を感謝する、小さな勇者よ」
「はは、私は勇者などという柄ではない。ただの武人さ」
私とカタリナは固い握手を交わしたのだった。
カタリナの仲介で、私は内務大臣に会えることになった。
とはいえ、相手も多忙なため、面会日は翌日の午後。
それまでは自由時間である。
「さて、何をするか――まあ、日課のアレだな」
庭で正拳突きを1000回ほどした後、大通りに出た。
せっかく王都に来たのだから軽く散策することにしたのだ。
と、
「ガーラ……か?」
突然、声をかけられた。
「ん?」
振り返ると、そこにはフードをまぶかにかぶって顔を隠した女の姿がある。
「君は?」
面識のない相手だった。
「ああ、これをかぶっていると分からないか。ちょっと、こっちへ」
と、路地裏まで引っ張っていかれた。
そこで彼女がフードを取る。
「久しぶりだな、ガーラ」
「ルナリア――」
以前にガドレーザで出会った王女、ルナリアだった。
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