5 自動魔法


「自動魔法……」


 私は驚いた。


 自動で敵を迎撃する魔法自体は存在するが、空中のドラゴンを一瞬で倒すほどのものは初めて見たのだ。


「かなり強力だな。たとえば魔族が相手でも効果があるのかな?」

「ん―……中位魔族くらいまでなら、普通に倒せるんじゃないかな? 高位魔族や魔将軍、魔王級になるとさすがに通じないと思う」


 と、ルーファス。


「では、高位魔族以上の相手にも通じるように、この魔法を改良することは可能か?」


 私はたずねてみた。


 もし可能ならば――ルーファスの魔法を各国に設置し、魔族対策に使えるかもしれない。

 と、


「ねえ、なんでそんなことを聞くの?」


 ルーファスが首をかしげた。


 顔は笑っているが、目の奥の瞳はやけに鋭かった。


「近々、魔族が現れる予兆でも? 僕は気づかなかったけどなぁ」

「……その通りだ」


 私はルーファスをあらためて見つめた。


 ボーっとしたようで、意外に鋭い洞察力を備えているのかもしれない。


「私はその情報を得て、各地の猛者を探している。魔族の大軍団が現れたとき、人々を守るために多くの猛者が必要だ」

「ふーん……?」


 ルーファスが私を見つめ直した。


「もしかして、僕もその『猛者』の中に入ってる?」

「ああ、君は強い」


 私は彼に言った。


「魔族が現れた暁には、ぜひ人々を守る力になってほしい」

「断る」


 清々しいほどはっきりした拒絶の返事だった。

 ゆるいキャラクターのようで、譲らない部分は絶対に譲らない、というタイプかもしれない。


 私はそれ以上、強硬に出ることはせず、代替案を提言することにした。


「では、こういうのはどうだ? 君自身は戦わなくていい。代わりに、その自動魔法で各国を救ってくれ」

「やだよ。面倒くさいもん」


 ルーファスが言った。


「僕は毎日やることもなくボーッとしながら惰眠を貪り続けたいんだ」


 怠惰だ。


 この男、とてつもなく怠惰な性質をしている――。

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