第3章 魔法大国キラル

1 魔族対策


 バシューレは僧侶たちによって何重にも魔力を封じられた状態で、ウィナスの王城に運ばれることになった。

 そこで魔族に関することを取り調べられるのだろう。


 で、私は――。


「同盟?」

「そ。いくつかの同盟国に連絡して、対魔族防衛網を敷くの」


 アリスが言った。


「さっきウィナス王国からそういう通達が出たって。とりあえず戦力として期待できそうな私たち出場者には、前もって教えてくれたよ」

「……私のところには来なかったな」


 私は首をかしげた。

 アリスが苦笑して、


「ガーラはどこにいるか分からなかったから、とりあえず私が伝言を頼まれたの。後で王国の人があらためて伝達に来るだろうけど」

「ああ、そういえば日課の正拳突きをしてたからな」

「また? あんた、暇さえあれば正拳突きよね……」

「早くこの体でもっと動けるようになりたいからな」


 呆れたようなアリスに笑う私。


「正拳突きは基本だ。まあ、それはそれとして……魔族の主戦力が現れたら、私が全部倒して回るつもりだが――」


 とはいえ、私の体は一つしかない。


 この広い国土を……いや、いくつもの国土を一人で守るのは、現実問題として無理だ。


 それには強い力が複数必要だ。

 そう、今回の武術大会に大勢の猛者が集ったように。




「かつての魔王大戦で活躍した英雄たちは、老齢で引退したり、すでに亡く

なっている者が多いな……」


 私はため息をついた。

 私が99歳で死んだとき――他の英雄たちも軒並み60代から70代くら

いだったと思う。

 そこから、さらに十年が経ったのだ。


 もはや現役で戦える者は、ほとんどいまい。


 当時の魔王大戦で活躍した英雄は『破砕騎士ゴル』や『青の竜騎士ゼルス』などがいるが、いずれも故人である。


 ただ、その技を受け継いだものがいるかもしれない。

 あるいは彼らの血族に、彼らのような猛者がいるかもしれない。


「まずは――猛者探しだな」


 と、


「猛者というなら、この俺を指名してもらいたいな、ガーラ師匠」


 シュナイドがやって来た。


「いや、私は別に君の師匠ではないが」

「あなたはすでに、我が心の師!」

「お、おう……」


 シュナイドの熱量に、私は若干引き気味だった。


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