17 決勝戦開始

 準決勝のもう一試合は予想通りバシューレが圧勝した。


 決勝戦の組み合わせは私とバシューレだ。


「とうとう決勝戦だね。がんばって、ガーラ!」


 アリスが私の元に歩み寄った。


「ああ、楽しみだ。アリス、一回戦のケガは大丈夫なのか?」

「うん、医務室にいた僧侶の人が凄腕で、すぐ治してくれたよ」


 アリスが笑った。

 実際、元気そうだし、ほっと一安心だ。


「ご武運を」


 と、『竜殺しのシュナイド』もやって来た。


「あなたの実力なら心配無用とは思うが、相手はなかなかの猛者の様子」

「ああ、彼は強い」


 私は笑った。

 嬉しくて、笑みを抑えきれない。


「楽しみだよ。強い相手と戦えば、私も今以上の力を引き出してもらえるだろう――」

「……あなたの本質は、どこまでも武人なのだな」


 シュナイドがつぶやいた。


「いや、武神というべきか……確かにあの伝説の武神ガーラを思わせる。まるで……生まれ変わりのように」

「伝説の、か」

「99歳にして未だ現役だった最強の武闘家……だが、十年ほど前に行方不明になったようだ」


 ……それは私自身なのだが、まあ今は言うまい。

 話の腰が折れてしまう。


「お前の強さを見せてもらうぞ」


 と、狼の獣人戦士もやって来た。


「俺は、あのバシューレという奴の戦いも見てきた。はっきり言って強い――だが、お前なら勝てるかもしれん」

「必ず勝つさ」


 私はグッと拳を突き出した。


「見ていてくれ」


 そして私は戦友たちに別れを告げ、決勝戦の舞台へと向かう――。




 サークル内で、私はバシューレと向かい合った。


「あらためて――ガーラだ、よろしく頼む」


 私は彼に一礼する。

 バシューレはふんと鼻を鳴らした。


「貴様の名前などどうでもいい。すぐに叩きのめす」

「対戦前の一礼くらいはした方がいいぞ。いちおう年長者として忠告しておこう」

「何が年長者だ、この子どもが」


 バシューレがまた鼻を鳴らした。


「ああ、そういえば10歳だったな……いかんいかん。すぐに忘れてしまう」


 私は照れ笑いを浮かべた。


「戯れ言を! もう戦いは始まっているのだぞ!」


 男が、動いた。


 速い――!


「そら、終わりだ」


 背後から声が聞こえる。

 私は振り向きざまに、その拳を受けた。


「こいつ……っ」

「アリスとの戦いを見て、だいたいの動きは見切った。もはや君のスピードでは私に通用しない」

「見切っただと。ふざけるな――」


 さらに連打を繰り出すバシューレだが、私はいずれも受け、あるいは避けてみせた。


「な、なぜ反撃しない!? 余裕のつもりか!」

「違うな。私は君を観察している――」




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