15 一回戦終了
バシューレは一瞬、息を飲んだようだ。
「……貴様、『魔闘モード』の俺の拳を止めただと」
わずかに目を見開き、私をにらんでいる。
「勝負はもうついていた。これ以上の追撃はやめるんだ」
私はバシューレを見据えた。
その瞳を覗き込み、違和感を覚える。
人間味というものが、まったく感じられない。
まるで殺戮のための機械のような――。
あまりにも冷たい瞳だった。
「……ふん。まあいい」
バシューレが離れる。
「貴様の名は?」
「ガーラだ」
私が名乗った。
「覚えておくぞ。このままいけば、決勝で当たる……か」
「ならば、そこで勝負をつけよう」
「勝負? ふん、人間ごときが、俺とか?」
バシューレがニヤリと笑った。
「勝ちあがってきたら相手をしてやろう」
言って、彼は背を向け、去っていった。
「うう……」
アリスがうめく。
「大丈夫か、アリス。すぐに医務室へ。確か腕のいい僧侶が治癒呪文をかけてくれるはずだ」
「う、うん……」
アリスが弱々しく立ち上がる。
「私が肩を貸す――」
「私たちの身長差じゃ無理よ。でも、ありがと」
振り返って、アリスが微笑む。
その表情が沈んだ。
彼女は圧政に苦しむ故郷を救うため、大会の賞金を求めてやって来た。
それが一回戦で敗退したのだから、気落ちは大きいだろう。
「村のことは心配するな、アリス。私が優勝する」
私が彼女を元気づけた。
「でも、決勝まで行けば、あいつが……」
「奴は私が倒す」
ニッと笑う私。
「ん……」
アリスは私にギュッと抱き着いた。
「がんばって、ガーラ」
――そして、一回戦のすべての試合が終了した。
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