14 アリスの戦い


「一回戦、第三十試合――『雷撃剣のアリス』VS『黒き武闘家バシューレ』、はじめ!」


 アリスの試合が始まった。


 対戦相手のバシューレとやらは、黒ずくめの衣装を身に付けた武闘家だ。

 私と同じく拳や蹴りで戦うスタイルのようだった。


「……ふむ」


 バシューレはなかなかの体術を使う。


 拳も蹴りも鋭い。


「無駄よ、無駄無駄っ」


 が、アリスはその上を行っていた。

 相手の攻撃をすべて防ぎ、雷撃を見舞う。


 バシューレも最初は避けていたが、徐々に避けきれなくなってきた。


「ほらほら、逃げ場はないわよっ!」


 アリスの攻撃コンビネーションが、相手の動きを完全に封じている。


 そろそろ、大ダメージを与えられそうだな。

 私がそう思った刹那、


「はあああああっ!」


 アリスの雷撃がうなる。


「くっ……!」


 対戦相手はサークルの端まで吹っ飛ばされた。


「さすがだ」


 私はうなった。


 雷撃の出力が、私と戦ったときよりも高い。

 これが戦闘モードのアリス、ということか。


「勝負あり――ん?」


 審判がアリスの勝利を宣告しようとしたところで、黒煙の向こうから立ち上がる影があった。


「ふん、なかなかの一撃だ」


 あれだけの雷撃を食らったのに、まったく応えていない――。


「今の形態では勝てんか……生意気な小娘だ。『魔闘モード』を使ってやる……光栄に思え」


 告げると同時に、バシューレの全身から黒い炎のようなオーラが沸き上がった。


「あれは――」


 私はゾクリと背筋が粟立つのを感じた。


「この気配は……」


 奴を注視する。


 バシューレが放つ気配は、ただの人間のそれではない。

 もっと異質で、もっと異様な気配。


 あの男はいったい……!?


「な、何、こいつ……雰囲気が……!?」


 アリスは戸惑ったような顔をしていた。


「ええいっ」


 が、すぐに気持ちを立て直したのか、雷撃を放つ。


「無駄だ」


 ばちぃっ!


 その雷撃は、バシューレがまとう黒いオーラに触れると、あっさり霧散してしまった。


「そんな!?」

「飛び道具の使い方を教えてやろう」


 バシューレが右手を突き出す。


「むんっ」


 気合いとともに、オーラの一部が黒い衝撃波となって放たれた。


 ごうっ!


「きゃぁぁぁぁっ!?」


 アリスが大きく吹き飛ばされる。


「が、がはっ……」


 まずい――。

 体を強く打ったのか、立ち上がれない。


 しかも、対戦相手はそんな彼女に容赦なく追撃をかけた。


 一瞬で間合いを詰め、倒れたアリスに向かって、すさまじい勢いで拳を振り下ろす――。


「そこまで!」


 私は二人の間に割って入り、拳を止めた。


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