13 武人から心酔される武神

 私が繰り出した一撃でシュナイドは大きく吹き飛び、ダウンした。


 しばらく意識を失っていたらしいが、数十秒ですぐに起き上がってくる。


「うむ、回復が早いな。さすがだ」


 私は油断なく身構えた。


 彼が今の攻防で負けを認めるならよし、認めないなら、また別の手段を考える必要がある。


 と、シュナイドは私の元に歩み寄り、


「俺の負けだ。お前は――いや、あなたは実力の次元が違う」


 そう言って、私の前に跪いた。

 深々と一礼する。


「その年齢にして神のごとき武の領域に達しているとは……このシュナイド、まことに感服いたした。叶うなら――ぜひ、あなた様の弟子にしていただきたい!」


 いきなりの弟子入り志願に、私も多少面食らってしまう。


「弟子か……」


 昔は大勢の弟子を持った時期もあったが、『ある事件』をきっかけに、それ以降は弟子を持たない主義になってしまった。


「あいにく、私は弟子を持たないことにしていて、な。すまない」


 私はシュナイドに謝った。


 彼の素質は素晴らしいと思う。

 わずかな攻防だったが、その伸びしろも見て取れた。


「ただ、せめて――今の戦いで気づいたことを伝えさせてもらう」




「……なるほど。俺に、そんな隙が。それに攻撃時の癖なども非常に参考になる……ありがたい」

「修練を積めば、その隙を少なくすることも、なくすことも、あるいは利点に変えることすらも可能だ」


 私は微笑む。


「あなたは――何者なのだ? 見た目通りの年齢ではないのか?」


 シュナイドが私を見つめた。


 私は答えず微笑むのみだ。

 やがて、シュナイドは一礼して去っていった。


『この後の、あなたの戦いを見届けさせていただく』と観客席の最前列に陣取っている。


 と、入れ替わるようにして、アリスが駆け寄ってきた。


「す、すごーいっ! あんた、あのシュナイドにあっさり勝っちゃうなんて――」


 アリスは興奮からか、顔を真っ赤にしてまくしたてる。


「どうなってるのよ? 本当に、あんた何者?」

「シュナイドと同じことを聞くのだな」


 私は苦笑した。


「アリスの一回戦はいつなんだ?」

「ん。この後だよ。第三十試合」

「そうか、健闘を祈る」

「決勝であんたと戦うからね。見てて!」


 彼女はぱちんとウインクをしてみせた。

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