12 竜殺しのシュナイド2(シュナイド視点)


 シュナイドはもともと小国の騎士だった。


 だが、上層部の腐敗ぶりにうんざりし、意見を言ったところ、濡れ衣をかぶせられて投獄されてしまったのだ。


 この国は腐っている――。

 絶望した彼は、自らの力だけで脱獄し、国外へ出た。


 もはや頼れるのは自分の腕のみ。


 十年近い放浪の中で、彼は剣を磨き続け、ついにはナイフ一本で竜を倒せるほどの超絶の剣士へと成長を遂げた。


 そして今、一年ぶりにウィナス王国の武術大会に出場しているのだが――。




 彼は、長らく全力を出す機会がなかった。


 一対一で、自分と対等以上に渡り合える相手に飢えていた。


(貴様なら、俺の『飢え』を満たしてくれるのか、ガーラとやら!)


 シュナイドが一歩踏み出す。


 肌で感じていた。


 この少年の外見に騙されてはならない。

 中身は、まさしく歴戦の猛者。


 この年齢でなぜ、という疑問はあったが、どうでもいい。


 シュナイドが求めるのは強者のみ。

 そんな強者と繰り広げる、極限の死闘のみ。


「貴様は、本気を出してもよい相手なのか――?」

「無論だ。さあ、来い」

「ならば参る!」


 シュナイドは全速力で一歩を踏み出した。


 最高速度で突進し、渾身の一撃を叩きつける――。

 それがシュナイドの得意技だ。


 シンプル極まりない攻撃こそが、彼にとって最強の必殺技となる。


「るあああああおおおおおおおおおおおっ!」


 咆哮とともに繰り出したのは、固有スキル【撃閃げきせん】。


 音速をはるかに超えるスピードで繰り出された大剣は、ガーラを捉え、両断した。


「――今の一撃、見事」


 次の瞬間、両断したはずのガーラの姿が消え失せる。


「馬鹿な!?」


 シュナイドが愕然と叫んだ。


「残像だと――!?」

「だが、まだまだ強くなる余地はある。精進するがいい」


 背中に感じた衝撃とともに、シュナイドは大きく吹き飛ばされた。


 たったの一撃で――。

 彼の意識は、遠のいた。


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