11 竜殺しのシュナイド1

 剣士が魔法使いを叩きのめし、精霊使いが弓術士を圧倒する。


 圧勝もあれば接戦もあり、どの試合も見ごたえがあった。


 やがて第十三試合になり、私の出番がやって来た。


 円形のステージに上がる。

 十メートルほどの距離を置いて、対戦相手と向かい合った。


「貴様が俺の相手か」


 シュナイドは二メートルをはるかに超える巨漢だ。

 身の丈を超える巨大な剣を手にしている。


「ガーラだ。いい勝負をしよう」

「いい勝負をする? 無理だな。貴様のような子どもと俺では勝負にすらなるまい」


 シュナイドが傲然と告げた。


 といっても、私を馬鹿にしている様子はない。

 ただ自分と相手の力量を冷静に判断し、事実そのままを口にした――という雰囲気だった。


「ただし――その判断は誤りだ」

「何?」

「安心しろ。私はただの子どもではない」

「その華奢な体で何ができる? 本物の戦場に出たことはあるのか? 命のやり取りをしたことは?」


 シュナイドはあくまでも冷静だ。


「俺は、子どもを相手にする剣は持たぬ。まして貴様は丸腰ではないか。降参しろ」

「あいにく降参はできない。優勝すると約束したからな」


 私はニヤリと笑った。


「さあ、躊躇することはない。戦おう」

「貴様……」


 そこでシュナイドの表情に怒りが混じった。


「俺には武人としての誇りがある。どうしても貴様が降りぬなら、俺が降りる」

「それでは君の負けになってしまうが?」

「丸腰の子どもと戦うくらいなら、負けで結構!」


 ほう、いさぎよい男だ。

 気に入ったぞ。


「そのような者であれば、私も拳を交えてみたい。ぜひ勝負を受けてくれ」


    ※


 SIDE シュナイド



(まだ子どもではないか……なぜ、こんな奴が武術大会に出てきたのだ)


 シュナイドは納得がいかなかった。


 ケガ程度なら構わない。

 武術大会なのだから、ある程度の覚悟はあるだろう。


 たとえ、子どもといえども。

 だが、彼が全力で戦えば、ケガ程度では絶対にすまない。


 下手をすれば、この子どもは死んでしまう。


 そうでなくても、こんな華奢な体では、自分の一撃がかすっただけでも取り返しのつかないダメージを与えてしまうかもしれない。


「私のことは気遣うな、騎士シュナイド」


 ガーラという名の少年が言った。


「私は――強いぞ?」


 ごうっ!


 その瞬間、小さな少年の全身から炎のようなオーラが立ち上った。


 それは彼の迫力がそう見せたのか、あるいは『闘気』や『魔力』の類がオーラとなって放たれているのか。

 どちらにせよ、ただの子どもができることではない。


「ほう……」


 シュナイドの表情が変わった。


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