9 武術大会、当日の朝

 三日後――。

 いよいよ今日はウィナス王国武術大会が開かれる。


「いい朝だ」


 私は早朝に目覚めた。


 99歳だったころは朝四時くらいに目が覚めていたのだが、10歳に生まれ変わっても、その習慣が染みついているらしい。

 日が昇る前に目が覚めてしまった。


 心地よい朝である。


 しばらく体をほぐしたり、軽く周囲を走ってきた後、庭の隅に出て、とりあえず正拳突きを始める。

 朝のうちに1000回ほどこなしておいた。


 戻ってくると七時前だった。

 と、


「ち、ちょっと、ガーラ! あんたの一回戦の相手、見た!?」


 アリスが私の元に駆け寄ってきた。


「おはよう、アリス」

「おはよう……じゃなくって!」

「どうかしたのか? 随分な慌てようだな」


 私は彼女に微笑んだ。


「もう武術大会の組み合わせが決まったのか?」

「昨日の夜に発表されてたわよ。見なかったの?」

「日課の正拳突きにいそしんでいたら、忘れていた」

「呑気ね……」


 アリスは眉根を寄せ、


「まあいいわ。あんたの相手だけど――」

「誰なんだ?」


 私はワクワクしながら尋ねた。

 どうせなら最初から猛者と当たりたいものだ。


「前回の優勝者よ! 『竜殺しのシュナイド』って知ってるでしょ!」

「シュナイド……?」


 聞いたことがないな。


 それなりに名前が知られた戦士かもしれないが、そもそも私が死んだのは――どうやら十年前らしい。

 武術大会が行われるまでの間、やることもないので、調べてみたのだ。


 私が殺されたのは王歴792年で、今は王歴802年のようだ。

 私が所属していたギルドはまだ存続しているのだろうか――。


「まさか知らないわけない……よね? ナイフ一本で竜を斬り倒したっていう、伝説級の剣豪よ!」


 アリスが言った。


「ほう、それはすごいな。そんな猛者が優勝者ならうなずけるところだ」

「何を他人事みたいに言ってんのよ! そのシュナイドがあんたの一回戦の相手だってば!」


 アリスがまくしたてる。


「なるほど……楽しみだ」


 私がニヤリと笑った。


「それほどの相手なら、私も久しぶりに本気を出せるかもしれん」

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