3 アリス、武神との力の差を知る(アリス視点)


 SIDE アリス



「私の雷撃をあっさり避けた――?」


 アリスは驚いて彼を見つめた。


 綺麗な蜂蜜色の髪に涼しげな青い瞳。

 華奢な体つきも相まって、美少女と見間違えそうなほどの美しい少年だった。


 だが、そんな繊細な外見とは裏腹に、この少年はどうやら恐るべき使い手らしい。


 わずか十歳ほどに見える少年が、まるで歴戦の猛者のような威圧感を放っている――。

 それを肌で感じ取り、アリスの緊張感は高まっていった。


「雷撃を飛ばしてくるのは、最初から想定していた攻撃の一つ。それを阻止するために、あらかじめ残像を作っておいたのだ」


 少年が言った。


「私の移動速度からすれば造作もないこと」

「こ、このぉっ……!」


 アリスはふたたび突進し、拳を繰り出す。

 さらに雷撃も放ったが、いずれも簡単に見切られてしまった。


「拳では私には勝てんぞ。剣を使うがいい」

「子ども相手に使えるわけ……ええい、峰打ちならっ」


 アリスはやむを得ず剣を抜くと、彼に向かって斬撃を繰り出した。


 もちろん斬り殺すつもりはない。

 刀身を寝かせ、軽く打ち据えるつもりだった。


「ふむ、鋭い――いい一撃だ」


 少年がつぶやく。


「ただ、この間のルナリア王女の方がもう一段鋭かったか……」


 ルナリア王女――。

 それは隣国で勇名を馳せる姫騎士のことだ。


 一国の王女でありながら、その剣腕はすさまじく、大陸最強格の一人とも言われている。

 アリスにとっても憧れの女性だった。


(まさか、こいつ……ルナリア姫の知り合い……!?)


 驚きつつも、今はこの勝負に集中する。


「はああああああっ!」


 気合いとともに、少年の肩口あたりに剣の峰を叩きつける――。


「足元がお留守だぞ」


 が、彼は軽々と斬撃をかいくぐり、アリスに足払いをかけた。


「ひあぁぁっ!?」


 斬撃を放った直後ではどうしようもなく、あっさり転ばされてしまう。


「君はどうも攻撃に意識を集中しすぎる癖があるな。そのせいで、攻撃直後に無防備になる。こうやって簡単に足払いにかかってしまうのが、その証拠だ」

「くっ……生意気……っ!」


 アリスは怒りの声を上げた。


「ここで会ったのも何かの縁――軽くレッスンしてやろう」


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