2 雷撃剣のアリス

「ここは子どもの遊び場じゃないわよ。ケガしないうちに帰りなさい」


 ふぁさぁっ、と髪をかき上げるアリス。


「遊ばせてはくれないのか? ひさびさに武術大会で腕を試してみたいと思ったのだが……」

「だめだめ」

「そこをなんとか」

「あんたもしつこいわね……じゃあ、おねーさんが遊んであげるわ」

「君が?」


 確か、彼女は前回のベスト4と言っていたな。

 つまりは、相当の実力者に違いない。


「では、お相手願おう。私はガーラと申す者」

「アリスよ。ケガしないように手加減してあげるから安心しなさい」


 アリスと名乗った少女はまた、ふぁさぁっ、と髪をかき上げた。




 私とアリスは近くの広場に移動した。


「さ、どこからでもかかってきて」


 アリスが言った。


「剣を抜かないのか?」

「ハア? あんたみたいな子どもを相手に剣なんて使わないわよ」


 顔をしかめるアリス。


「しかし、二つ名からして君の得意技は雷撃魔法かスキルと剣術の組み合わせではないのか?」


 私は彼女に言った。


「それとぜひ戦ってみたいな」

「だからケガするって」

「たびたび心配をかけて申し訳ない。だが安心してほしい。傷一つ負わずに勝つことを約束しよう」

「……生意気ね」


 私の言葉にアリスの顔つきが変わった。


 さっきまでは、文字通り子どもをあやすような感じだったのが、今は闘志がにじみ出している。


 剣士としての、顔だ。


 そうこなくては、な。


 私はワクワクしてくるのを感じた。


「いくら子どもでも言っていいことと悪いことがあるのよ。ちょっとだけお仕置きしてあげようかしら?」

「存分に来るがいい」


 私は構えを取った。


 不敗流の基本的な構えだ。

 つまりは――戦闘態勢を取った、ということである。


「さあ、始めよう。楽しい試合を」




「かるーくひねってあげる!」


 言うなり、アリスが地を蹴った。


 ばりっ、ばりっ!


 全身に雷をまといながら加速する。


 直接攻撃を受ければもちろんだが、彼女の周囲にある雷撃に少しでも触れたら、痺れて動けなくなるかもしれない。

 だとすれば、それも計算に入れて回避行動に移る必要がある。


「はあっ!」


 アリスが繰り出したのは剣ではなく、拳だ。

 だが、その動きは私の目にはすべて見えている。


 見切って、いる。


 バックステップして難なく避けた。


「甘いわよ!」


 その瞬間、アリスの周囲から雷がほとばしった。

 雷撃の範囲が一気に広まる。


 ばぢぃっ!


 雷撃が私の体を直撃した。

 その瞬間、私の体は霧散した。


「えっ……!?」


 驚いたようなアリスの声。


「残像だ」


 私はアリスの背後に移動していた。


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