14 そのころギルドでは……。2(追放者視点)


 ギルドに所属する伝説的な冒険者『武神ガーラ』を追放したことで、ギルドマスターのゾーリンは窮地に立たされていた。


 連日続くギルドメンバーからの糾弾。

 だが、糾弾はこれだけでは終わらなかった。


「ギルドを辞めるだと!?」

「ああ。ガーラさんをクビにしたあんたの仕打ちは許せない。今日限りでここを辞めさせてもらう」

「ま、待て、A級のお前が抜けられるのは痛手だ。考え直せ!」

「断る」

「わ、分かった、年俸を上げよう。いくら欲しい?」

「金で俺を飼えると思ったか? 俺がここにいたのはガーラさんがいたからだ」


 彼はゾーリンをにらんだ。


「そのガーラさんがいなくなった以上、俺もここに残る理由がない」


 さらに複数の男女がゾーリンの部屋に入って来る。


 全員、険しい顔で彼をにらみつけていた。

 敵意だ。


 明らかな敵意が、ゾーリンに向けられている――。


「待てよ、お前だけ辞めさせねぇからな」

「俺も出ていく」

「あたしも」

「なぁ、みんなでガーラさんのところに行かないか?」

「いいな!」

「行こう!」


 彼らはいずれもA級冒険者――このギルドを支えるエースたちである。


「お、おい、ふざけるなよ! 全員まとめて辞める気か!? 許さんぞ、そんなこと――」

「あんたの指図は受けない」


 彼らは異口同音に言った。


 そして、出ていってしまった。




 A級冒険者七名、B級冒険者十六名、C級冒険者五十一名――。

 ギルドから離脱した総数である。


 おかげで受注予定だった仕事が、まったく立ち行かなくなった。


 さすがに受けていた仕事を途中で放り投げるものはいなかったが、ゾーリンがこれから受けようとしていた仕事――その中にはA級冒険者の力が必須のものが多々ある――は、すべてキャンセルせざるを得なくなった。


「くそっ、二流の雑魚ばかりが残っても仕方ねーんだよ!」


 ゾーリンが毒づく。

 そして――。


「い、違約金……!?」

「クエストを達成できないとなれば、当然いただかねばなりません」

「いや、待ってくれ。うちは今、A級の連中が軒並み抜けてしまって……そんな高難度クエストはこなせないんだ!」

「関係ありません」


 入る予定だった金が減っていく。

 さらに、投資先からも突き上げを食らった。


「困りますねぇ……どうして彼らを引き留められなかったんですか?」

「こっちも慈善事業で投資してるわけじゃないんでねぇ」


 彼らのネチネチした物言いにも、ゾーリンは言い返せない。

 まるで針のむしろだ。


(くそっ、これも全部ガーラのせいだ……!)








※次回から第2章になります。ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!

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