9 一気にラスボス戦へ


 三大側近の一人、バズトゥールとやらを倒した私は、ルナリアとともに道を進んでいた。


「信じられん、バズトゥールは以前に我が国の都市を三つも滅ぼした強敵だぞ。それを一瞬で……」


 ルナリアはまだ驚いているようだ。


 それでも私に並走できるのは大したものだった。

 私はさっきまでよりもスピードを上げているからだ。


 ……とはいえ、ここまで来ると、ルナリア一人を置いていくのは逆に危険だ。

 王都まで戻る前に、炎竜王の手の者に見つかり、襲われる可能性もある。


「……少しスピードを緩めようか」

「何?」

「君の方は息が上がっている」

「むっ、気を遣うな」

「君を置き去りにはしない。約束するよ」


 私は彼女に微笑みかけた。


「構わん。ついてこられなければ置いていけ」


 と、ルナリア。


「先ほどのお前の戦いを見て、分かった。お前なら炎竜王にも勝てる。我が国を救える。だから、前言撤回だ」

「ほう?」

「一刻も早く炎竜王の元へ行き、奴を倒そう。あたしにできることなら、どんな礼でもする……!」


 と、私の前にいきなり跪くルナリア。


「そんなことはしなくていい。私はただ今後の人生の『当座の目標』として、炎竜王討伐を決めたのだ。行ってみれば、この戦いは私自身の理由だ」


 微笑んでみせる。


「お前の……理由か」


 ルナリアが立ち上がった。


「さあ、行くぞ。手早くブレイズ軍を撃破して、君の国を救うとしよう」

「ああ。あたしもできる限りのことはさせてもらう」


 そして、私たちはまた走り出した。




「ここから先は通さんぞ! 我は炎竜王ブレイズ様の三大側近の一人――真紅竜ガイゼ」

「急いでいる。すまんな」


 新たに現れた敵が名乗り終わる前に、私は拳を繰り出した。


 ごうんっ!


 一撃でそいつは砕け散り、消滅する。


「せめて最後まで名乗らせてやるべきだったか……まあ、いいか」


 さらに先へ進むと、


「ここから先には行かせん! この俺は炎竜王ブレイズ様の三大側き――」


 ごうんっ!


 またも一撃。

 そいつも消滅した。


「……身も蓋もないな」


 隣を走るルナリアがジト目で私を見た。




 そして――私たちは最後の敵ともいうべき『炎竜王ブレイズ』の元へとたどり着いた。

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