8 ブレイズ軍の幹部を一撃で倒す

「はあ、はあ……お、追いついたぞ……」


 ルナリアが私の隣に並んでいた。


「なんだ、君は城で待っていてくれればいいのに」

「ふざけるな。十歳の子どもに任せて、あたしだけのうのうと城になどいられるか」


 ムッとした顔で反論するルナリア。


「しかし王女が――」

「国のために体を張るのが王女の務め!」


 ルナリアが言い放った。


「それに――王族が命懸けで国の脅威に立ち向かうことは、きっと民に勇気を与えると思う。たとえ、この戦いであたしが殺されたとしても、まったくの無駄死ににはならない」

「ルナリア……」

「あたしは戦いしか能がないからな。これくらいしかできないのさ」

「……いや、立派だ」


 私は彼女に一礼した。


「ただ、問題はない。私が君を守る」

「ほう? 頼もしいナイト様だな」

「必ず炎竜王を倒す」


 言って、私は歩き続けた。

 ルナリアがその隣に並ぶ。


 年頃の少女とは思えぬほどの、すさまじい健脚ぶりだ。

 私の道程にぴったりついてくる。


「やるな……」

「ん、何か言ったか?」

「一流の剣士としての能力を持っている。しかも、まだまだ成長しそうだ。よほど鍛錬を積んだんだな」

「あたしは戦いしか能がない。いちおう国一番の剣士と呼ばれているぞ。おかげで縁談の話すら来ないが、な!」


 ルナリアがまた笑った。


「君は美しいし、性格もいい。いずれいい話が来るさ」

「な、なんだ、いきなり!?」


 ルナリアが顔を赤くした。


「ん、こういう誉め言葉は慣れていないのか?」

「お前のような美少年に言われると、さすがに照れる」


 と、はにかむルナリア。

 そうしていると、先ほどの勇猛な女騎士とはまったく違う、年頃の可憐な乙女らしさが顔をのぞかせた。


「美少年……それを言うなら、君こそ美少女だろう」

「だ、だから、そういうことを言うな! 照れるからっ!」


 ルナリアは真っ赤だった。

 ますます可愛らしい。


 私はまるで年の離れた娘か、孫でも愛でる気分になっていた。


 まあ、実際の私には妻も子も、当然孫もいないのだが。

 と――、


「おっと、貴様ら! ここから先は炎竜王ブレイズ様のテリトリーだ。通ることはできんぞ」


 いきなり巨大な竜が空から降りてきた。


「ブレイズの手下か?」

「炎竜王様の三大側近の一人――紅蓮竜バズトゥールだ。この俺の炎は鉄をも溶かす! 貴様らの体など一秒も経たずに」

「悪いが先を急ぐ」


 私は拳を繰り出した。


 ごうんっ!


 一撃――。


 奴は砲弾にでもあたったかのように砕け散り、消滅した。



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