6 そのころギルドでは……(追放者視点)


 冒険者ギルド『剣魔の集い』――。


「ふざけるな、どうしてガーラさんをクビにした!」

「しかも、ガーラさんは行方不明らしいじゃないか!」


 ギルドマスターのゾーリンは若手の冒険者たちに詰め寄られていた。


 予想をはるかに超える猛反発だった。

 まさか、ガーラがここまで他のギルドメンバーから慕われていたとは――。


「ま、待て。落ち着け。あんな奴一人が抜けたところで、我がギルドは揺るぎもしない!」


 ゾーリンが叫ぶ。


「ここにはA級冒険者が何人も在籍してるんだぞ。あんな奴のことは忘れろ」

「戦力的な話だけをしてるんじゃない!」

「俺はあの人に体術を手ほどきされて、B級まで上がることができたんだ。一生の恩人だ!」

「俺も伸び悩んでいるときに丁寧に話を聞いてもらって……今、俺がA級寸前まで来ているのはガーラさんの助言があったからだ!」

「あたしだって!」

「僕だって!」


 メンバーたちが口々にガーラから受けた恩を語り出す。


「ガーラはそんなことをしていたのか……知らなかった……」


 ゾーリンは冷や汗を流していた。


「おい、答えろよ! マスター!」


 気の荒い冒険者の一人が、彼に詰め寄ってくる。


「ま、まあ、待て。話せばわか――ぐげぇっ!」


 いきなり殴られた。

 まさか、こんな下っ端から手を出されるとは予想しておらず、ゾーリンは呆然となる。


 一瞬遅れて、頬に猛烈な痛みが走った。



「き、貴様ぁ……!」


 怒りの声を上げて立ち上がるゾーリン。


「おい、誰か! そいつをつまみ出せ! いや、その前に今の行為の報いを受けさせてやるぞ! ほら、全員でそいつを押さえつけろ!」


 拘束した上で、百倍返しだ――。


 ゾーリンがニヤリと笑う。


 だが、周囲の反応は冷たかった。


「殴られて当然だろ」

「あんたに反感を持ってるのが、そいつだけだと思ったら大間違いだ」

「むしろ、よくやった、って感じ」


 冷ややかな目が、声が、かけられる。


「お、お前ら……?」


 ゾーリンは戸惑うばかりだった。


 自分の立場が明らかに悪くなっている。


 ガーラの追放が、ここまで影響を及ぼすとは――。


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