『昼食』
サクシードは勝手がわからないながらも、食堂でジャンティの分の食事を確保した。
それから医務室に向かって医務員に言付けて、あとで食べられるようにしたのだった。
訓練ドームの左隣にある、食堂棟に戻ってくると、トレイに好きなものを取り分け、混み合う中、席を探した。
すると、先輩たちが大声で手招いてくれた。
側に行くと、ガルーダたちのグループ四人だった。
「ご苦労さん。ジャンティはどうだった?」
ガルーダが尋ねるので、サクシードは答えた。
「横になってます。食事はまだ食べられないようでした」
「そうか。ちょっとどころか、かなり無理してたんだな」
「すみません、俺がペースを乱してしまって」
「いいや、ペースを乱したってんなら、俺だよ。どんどん遅くすればいいところを、ついてくるように言ったからな。でも、一時間もすれば回復するだろ。心配いらねぇよ。それより早く食っちまえ」
「はい」
掻き込むように食事をするサクシード。
先輩たちの好奇の視線が取り巻いていたが、彼は食事に集中する。
ガルーダは意図的に話題を変えた。
「午後一の訓練が、救急法に変わったようだぞ」
「えっ、そうなんすか?」
「教官の都合らしい。サラート教官が上に呼ばれたんだと」
「訓戒ですかね」
「さぁな。注意受ける人にも思えねぇが。あるいは訓練の査定かもな」
「近々、適性テストがあるってことですね」
「俺は”かも”と言ったぜ」
「ああ、はい、そうでした」
「上のことは俺らがどうこう言っても始まらねぇ。課されたことをこなすだけだ。新入り、そういうことだ。午後から研修センターの三階だ。ジャンティに知らせてくれ」
「はい」
サクシードは頷いた。
「あいつにはちょうどよかったっすね」
「他の連中に言ってきます」
先輩の一人が立ち上がって、他の訓練生に知らせに言った。
食べ終わったサクシードに、ガルーダが言った。
「新入り、一つ言っておく。俺は実力をいかんなく発揮するのが訓練だと言ったが。中にはそう思わない、他人の実力をよしとしない、足を引っ張る連中がいる。POAの軍人として働くことに比べたら、みみっちいゴミみたいな根性だが。そんな連中でも、仲間は仲間だ。うまく付き合うようにな」
「はい」
心得ているように、サクシードは返事した。
すると、彼の右隣に座っていた先輩が言った。
「まぁ、どんな職場でも、そういう連中は何パーセントかいるもんだ。無視すりゃ簡単だが、それじゃ協調が成り立たない。肝心なのはバランスだ。わかっているようだがな」
ポン、と肩を叩く。
「はい、気をつけます」
「うん、いいやつが入りましたね、ガルーダさん」
「おう、これからが楽しみだぜ」
「ありがとうございます……俺はそろそろ行きます」
「そうしろ。五分前には集合だぞ」
「はい」
サクシードは席を立ち、食器を片付けて、訓練ドームの医務室に向かった。
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