『全員の料理の腕前』
「二人は誰かに料理を習ったのか?」
サクシードが問うと、レンナが照れながら言った。
「私は料理好きのお友達に、基礎を目一杯叩き込まれたの。それまでは玉ねぎの剥き方ひとつ知らなかったのよ。そのあとで母にも仕込まれたし、料理店でアルバイトもしたし、ホントいろいろ」
「それでそんなにソツがないのか……フローラは?」
「わたくしは、ファイアートと少し似てるんですけれど。お城で出される食事が、素材の味を生かした、絶妙で繊細で薄味の料理ばかりでしたの。……領内を巡っていた時、生野菜をいただくことがあって。驚きましたわ、こんなに美味しいんだって。それで、その風味を生かしたお城の食事に興味を持ちまして、父にお願いして、厨房に入れてもらったんです」
「二人とも、恵まれた環境をきちんと生かしているな」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
「ちなみにサクシードは誰に習ったんだい?」
ファイアートに聞かれると、サクシードは料理歴を披露した。
「俺は島育ちだからな。主に銛で突いた魚を捌いたり、串焼きにしたり……姉貴にも嫁ぐ前にぎっちり仕込まれた。じいさんが昔気質で料理は一切しなかったから、必然な。猟をして鹿肉なんかを調理してたから、そこはラファルガーと共通するかもな」
「海のものはさっぱりだがな」
「クイリナリスでは手に入らないだろ?」
「ああ、供されても川魚くらいだな。こっちに来て、初めてイカ墨パスタを食べたら、病みつきになった」
「な、なんでイカ墨パスタ? ウケ狙ってるでしょ」
ファイアートがげらげら笑う。
「そんな必要がどこにある? ……どうせならインパクトのあるものから挑戦しようと思っただけだ」
「ははーん、それはだな……恋もハントを仕掛けるタイプだよ。不感症、返上した方がいいんじゃない?」
「なんでそうなる」
「あれ、知らない? 食べるってすごくセクシャルなことなんだよ。どっちもエネルギーを取り入れて、巡らせるでしょ。っつうことで、食べ方にも性傾向が表れるわけ。……君の食べ方見てると、豪快だし、ポーズと思いっ切り矛盾してるんですけど」
「そんなこと考えながら食事してるの?」
レンナが呆れて言った。
「誰かさんが顔から火を吹くから、このぐらいにしておいてあげるけど。……段は端折らないほうがいいかもね、サクシード」
「——やれやれ」
サクシードも呆れるしかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます