『申告』  

「さて、サクシード。今、君が見たままを正直にぶちまけてもらおうか?」

 いきなりファイアートが切り出して、ぎょっとするサクシード。

 間があって、ファイアートがさらに言った。

「……ここにいるのは、みんなその筋の関係者なんだ。君以外はね。どんなけったいなことを言っても大丈夫。それが当たり前の世界に生きてるからね。君が僕らを同じ現象を目にしていたのは承知済み。ただ、君自ら申告してもらう必要があるけどさ」

「本当よ、サクシード……私たちを信頼して」

 レンナの真剣な面持ちを見て、サクシードは決意した。

 スウッと息を吸い込んで一言。

「花が……歌っているように見えた」

 それを聞いたレンナたちは、一気に和んだ。

「そうだよ、花は歌ってるし、風はきらきら光ってるんだ! ようこそ『万世の秘法ばんせいのひほう』へ——!」

「『万世の秘法』——?」

 サクシードが繰り返すと、ファイアートはフローラに言った。

「ちょっと強引だったんじゃない? フローラ」

 にっこり微笑して、フローラは言った。

「ええ、でも……サクシードの段階から言ったら、遅い方ですわ」

「フローラが何かしたのか……?」

「はい、次元レベルを『降霊界』まで引き上げてみました。チューリップを見る前に、広大な花園を見ませんでした?」

「! 頭の中のイメージかと思った」

「それが心象、と呼ばれるものです。『降霊界・マンダラーヴァ』の夢幻花苑むげんかえんを、あなたは確かに見たのですよ」

「……」

「ここからはレンナさんの出番ですわ」

「うん」

 レンナは穏やかに語りだした。

「あのね、サクシード。万世の秘法というのは、こういった超常現象を統括下に置いた、思想団体の名称なの。よく覚えておいてね」

 レンナの言葉に静かに頷くサクシード。

「私は万世の秘法の修法者エターナリストと呼ばれる環境修復技術者です。別名を『万世の魔女』と言います」

「修法者は最高位なんだ。別称があるのが、その証拠」

 ファイアートの補足に頷いてから、レンナは続けた。

「万世の秘法には階級・位階が存在します。修法者以下、鳥俯瞰者アスペクター平面者プレイナー方向者ベクトラーと言い、総称して位階者と呼びます」

「ちなみに、僕は鳥俯瞰者、ラファルガーとロデュスは平面者だよ」

 三人を順々に見るサクシードに、ロデュスは微笑を返した。

「そんでフローラが、万世の秘法が拠点にしてる『因果界』のさらに上の階層『降霊界・マンダラーヴァ』の最高責任者・内宮の位についているんだよ。ついでに、君がパラティヌスに来るきっかけを作った、ジュリアス親善大使は、対になる外宮だ」

「——!」

 サクシードにも段々、相関図がわかってきた。

 レンナは続ける。

「私たち位階者は、七宮廷国上の因果界、それぞれに拠点があり、そこは『里』と呼ばれています。パラティヌスには『童話の里』、ウィミナリスには『伝説の里』があります。それとは別に国ごとの統括本部が設けられていて、位置は宮廷の上層です。位階者は主に『里』で、修法と呼ばれる環境修復技術を駆使して、生計を立てています」

「修法者になれば、現実世界……『真央界しんおうかい』って言うんだけど、仕事を持たなくても暮らせるくらいの収入が貰えるんだ。それはまた後でね」

「そして、万世の秘法と対立しているのが、『呪界法信奉者じゅかいほうしんぽうしゃ』と呼ばれる、テロリストです……」

「!!」

 いきなり核となる情報がもたらされた。

 

  


 

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