第3話 勇気をだして誘ってみた
マッチングアプリを始め、とても可愛い女の子とチャットで話すようになった。その子とはメッセージのやり取りを始めてから10日経った今でも、見事にやり取りは続いている。
「はぁ……
この言葉はもはや口癖になっていた。
美海さんとメッセージをしている時には、必ずこの言葉を発しているくらいだ。
「会ってみたいなぁ。このプロフィール画像は加工されてるんだろうけど、実際に会ってみたい」
会いたいという欲望が抑えきれず、思わず独り言を漏らしてしまうが、この家には俺しかいない。
ピコンっ。
突然ベッドの上に置いてあったスマホから通知音が鳴った。
真希奈からの面倒くさい連絡かと思ったが、俺が今1番やり取りを楽しみにしている相手からの連絡だった。
『そのアニメ、面白いですよね!』
『私も好きなんです!』
美海さんだ。
彼女とは今、アニメのことで話が盛り上がっている。マッチングアプリの趣味という欄を見て分かったことだが、美海さんも俺と同じようにアニメ鑑賞が趣味のようだ。そのため、俺から話を振って現在に至っている。
「直接会って話がしたいなぁ……。思い切って誘ってみようかな」
アニメ好きが共通の趣味だと分かってから、美海さんとは以前に増して仲良くなれたと思う。
直接会って話をすれば絶対楽しいだろうし、あわよくば交際にだって発展するかもしれない。
「よし……!」
覚悟を決めて、早速美海さんをデートに誘うことにした。
断られたり無視されたりしたらと思うとすごく怖いが、それよりももっと仲良くなりたいという気持ちが強い。
『もし良かったら直接会って話をしませんか?』
『美海さんと話すの楽しいので、実際に会ってもっと仲良くなりたいです(笑)』
とりあえずこんな感じで送ってみた。
……変じゃないよね?
まぁ、返信が来たらラッキー。返信が来なかったら……多分立ち直れないけど、諦めて次の人を探すしかないな。
そう思ってすぐだった。恐らく俺が誘いのメッセージを送ってから10秒も経っていないだろう。
『実は私も直接会って話したいと思ってたんです!』
『誘ってくれて嬉しいです! いつ空いてますか?』
美海さんからの返信だ。
直接会おうと誘ってから10秒も経っていない。そんなすぐに返信が来るとは思っていなかったため、驚きすぎて声が出ない。
……え? ……オーケーなのか?
本当に? 本当に美海さんと直接会って話ができるのか……?
見間違いかと思ってメッセージを見返してみるが、やはり見間違いではなかった。
これは夢ではない。現実だ。
「ま、まじか!!!!」
思い切って誘ってみてよかった。
そして美海さんも俺と同じで会いたいと思ってくれていたことがすごく嬉しい。
「っしゃぁぁぁあああ!!!」
夜中に大声を出すのは迷惑極まりないが、抑えるに抑えられず大声を出してしまう。
この声だけで近所から1つや2つは苦情が来るかもしれない。それはすぐ隣に住んでいる真希奈も例外ではないため、明日適当に理由をつけて謝ろうと決める。
……それにしても。
「まさか秒でオーケーが貰えるとは思わなかったな……」
これで俺もようやく恋ができる。
あのツンデレ真希奈に振り回されずに済む!
その後、寝る直前まで美海さんとメッセージを続け、会う日とその日のプランについて話し合った。
会う日は今週の日曜日。そしてプランとしては、カフェでまったり過ごしながら談笑することに決まった。
日曜日。初めて美海さんに会う日になった。
ドキドキが止まらない。
どのくらいかというと、1秒間に3回脈打ってるくらいにはドキドキしている。
早く会いたい。早く会って直接話がしたい。
約束の時間まであと1時間。今家を出れば、約束した場所に30分前には着くことになる。
「そろそろ行くか」
財布には気持ち多めにお金を入れ、スマホと一緒にズボンのポケットにしまう。
そして洗面所に向かい、身だしなみのチェックをする。
「……大丈夫、だよな」
今日はいつもとは違って少しオシャレをしてみた。
大学にはラフな格好で行くことが多いため、ちゃんとオシャレをするのは高校生の時以来かもしれない。
「あとは真希奈にバレないように家を出ればいいだけだな」
いつもとは違ったオシャレをした俺を見れば、真希奈も確実に俺がこれから女の子と会うことに勘づくだろう。そうなれば絶対に止められる。
「全く……家が隣ってのは色々と面倒だな」
親が大変な時に夕飯を作ってくれるのはすごく嬉しいし、もちろん感謝もしている。
だが他の女の子と遊ぶ時には色々と面倒なのだ。
俺が外に出ようとすれば、ほぼ毎回付いてこようとするから説得しなきゃいけないし。女の子と遊ぶことがバレたらなぜか分かんないけど怒るし。
だから真希奈には絶対にバレてはいけない。もしバレたとしても、全力で誤魔化す!!
そう心の中で強く決意し、いざ集合場所へ向かおうと外に出る。
すると同時に隣の家の扉が開いた。
「……あ、
そして隣の家から出てきた真希奈は、俺に気づくと同時に手を挙げて話しかけてきた。
最悪だ。今日に限ってどうして。
「ま、まぁな。真希奈こそどこか行くのか?」
「私は買い物。あ、ちょっとの間付き合ってよ」
「どうせ荷物持ちだろ。それに俺はこれから予定がある。また今度な」
「ふ〜ん……」
や、やばい。勘づかれる前に逃げなければ!
「じゃ、じゃあ俺は行くから――」
「待って」
あ、おわた。
「急いでるんだ。残念ながら1分1秒も無駄にできない」
「大丈夫よ。ただどこに行くのか聞くだけだから、すぐ終わるもの」
「友達の家に行くだけだが?」
「嘘をついても無駄よ。だってあんたには友達なんていないもんね」
「……っ」
ひ、酷い!
俺にだって1人くらい友達いる……いるもん!!
「それに仮に友達の家に行くのだとしても、さすがにオシャレしすぎだと思うけど?」
す、鋭いっ!
はぁ……しょうがない。
こういう時は、逃げるが勝ちだ!!
「なぁ、真希奈」
「なぁに?」
さぁ、早く本当のことを言いなさい、と言いたげな顔で見てくる真希奈。
「後ろから可愛い子犬が来たぞ」
「えっ! ほんと!?」
真希奈は大がつくほどの子犬好きなのだ。
しかし、当然後ろには子犬などいない。全ては真希奈が一瞬の隙を見せ、俺が逃げるための作戦!
「なんだ、いないじゃないん……って、あ!?」
真希奈は俺よりも足が遅い。なら、逃げてしまえばもう追ってきても無駄だ。
「じゃあな!」
「ちょっと!! 待ちなさい!!」
1分ほど走ると、もう真希奈は追うのを諦めたのか姿は見えなくなった。
「よし……作戦成功っと」
真希奈の姿が見えないことを再び確認し、早歩きで集合場所へと向かったのだった。
***
一方その頃、真希奈は息を荒らげながらも、手提げのカバンを強く握りしめて1つ決意をしていた。
「帰ってきたら絶対に吐かせてやるんだからっ! べ、別にあいつが何をしていようと私には関係ないけど!!」
先程までは怖い顔をしていたはずだが、今ではなぜか顔を少し赤くしてツンとした表情を見せているのは言うまでもない。
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