第37話 結果発表

 中間テストが終わってから三日が経ち、中間テストの結果が発表されるらしく朝早くからたくさんの人が廊下に集まっていた。

 その中にはもちろん俺と春樹はるき長谷川はせがわ桑原くわばらもいる。どうしてこの四人で一緒にいるのかというと、桑原の提案で勉強を教えてくれた先生である俺と一緒に見たいと言われたからだ。


「緊張する……」

みおちゃんならきっと大丈夫だよ〜。赤峰あかみねくんと勉強すごく頑張ったんだし〜」

「そう、だよね……」


 俺たちは今、中間地点である順位であれば180位あたりの結果が分かる場所にいる。

 ここから春樹以外の三人は順位が高い方に、春樹は順位が低い方に見ていく予定だ。……春樹、一人だけ悲しい。


「お、先生たち来たぞ!」

「ふぅ……大丈夫だ。絶対20位以内入ってるはず……!」


 先生たちは1位の方から順に名前が見えるように、結果が記された紙を貼り出していく。

 俺たちは全員いい順位を取れてますようにと願いながら合掌し、先生たちが全て貼り終えるのを待つ。

 結果は…………。


「赤峰くんすごいね〜!」

「さすがに引くくらいすごいわね」

「マジでお前、俺に少しくらい点数分けてくれよ!」

「ありがとう。普通に自分でも驚いてるよ……」


 今回の中間テストの目標順位は20位以内。

 それを超えることができればもちろん嬉しいし、これからの勉強のモチベーション向上にも繋がる。


 ――結果は、360人中11位だった。


 180位の方から上に探していったため20位まできても自分の名前がないことに少しだけ焦りを感じたが、11位で自分の名前を発見した時には号泣しそうだった。

 努力が報われ、野本のもとさんに見合う男に近づけた気がしてすごく嬉しかった。


 ちなみに高い順で見ていくと、長谷川が75位、桑原が83位、春樹が298位だ。

 長谷川と桑原は初めて100位以内に入ったらしく二人で抱き合っていたが、それと同時に桑原は初めて長谷川に負けたらしく悔しがっていた。春樹はいつも通り。


「それにしても長谷川と桑原、今回の順位上がりすぎだろ。俺が教えたとはいえ、普通ここまで上がるか?」

「ん〜、元々私たちが酷い点数取ってたのは数学だけでそれが足でまといになってたからじゃないかな〜」

「本当に二人ともなんで理系にきたの……」

「文系の科目の方が分からないから〜」

「……環奈かんなが理系にするって言うから」

「うん、それ前にも聞いたけど絶対文系の方が良かっただろ」


 文系は多少苦手でもどうにかなる。

 しかし理系は数学が苦手だったら絶望的。数学が苦手なのに理系に進もうと考えているなんて、正直有り得ないくらいだ。


「長谷川も桑原の意見に合わせなくたっていいだろ。自分の進路なのに」

「うぅ、わかってるけど……」

祐也ゆうや、お前まじで先生みたいだぞ」

「赤峰くん、先生向いてると思うよ〜」

「うるせ。まあ、今回は二人ともいい点数取れたのは普通にすごいよ。おめでとう」

「ありがと〜。また次もよろしくね〜、赤峰せんせ〜」

「……ありがと」


 次も教えてもらうつもりだったのか……。

 まあ、もしかしたら今回の中間テストで高順位を取れたのは二人に教えたからってことも少なからずあるだろうし、別にいいけど。


「俺は? 祐也、俺は?」


 褒めて褒めてと言いたげな顔で近づいてくる春樹。

 こいつ、いつもと変わらず赤点回避しただけだろ。褒める要素一つもねぇよ?


「赤点回避できてよかったなー。次は赤点取れるように頑張れよー」

「なんでだよ!?」


 そんな春樹は無視して教室に戻ろうとしたその時、後ろから廊下を走ってくる音とともに俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。


「あ、赤峰くんっ!」

「……え、野本さん? どうしたの?」


 話しかけてきたのは野本さんで、何か急ぎの用事でもあるのか息を切らしている。


「赤峰くんっ、すごいね! 順位!」

「ありがとう、野本さんも2位をキープするなんてすごいよ」

「ありがとう! でも私感激しちゃった! 赤峰くん、すごい勢いで伸びてるから!」


 そして野本さんは俺の手を掴み、胸に当たりそうな場所まで手を引き寄せた。

 本当に当たりそうだけど……当たらない。

 さらにはその様子を見ている長谷川が「なななな……!?」となを連発しているが、俺も心の中では長谷川と同じような感じである。


「自分でも驚いてる。野本さんにはまだ届かないけど、これからも頑張るよ」

「懐かしいなー、一年生の頃の勉強会。今ではあと少しで抜かれそうだもん。お互い頑張ろうね!」

「うん、頑張ろう」


 すると野本さんは俺の手を離し、「じゃあまたね!」と手を振りながら去っていった。

 さっきの野本さん、いつもと違う様子だったような気がしたけど気のせいだろうか。


「あ・か・み・ね?」

「……え、なに?」


 野本さんの様子について疑問に思っていると、長谷川が明らかに怒っている様子で近づいてくる。

 怖い。今にでも殺されそうなんですけど。


「野本さんと随分仲良くなったみたいね?」

「ま、まあ……ね」

「ふーん? へー?」


 こ、怖い!!!! 誰か助けて!!!


「ね〜ね〜、赤峰くん〜」

「ん、なに? 桑原」


 救世主!! ありがとう女神様!!


「野本さんさっき一年生の頃の勉強会って言ってたけど〜、一年生の時は二人で勉強会とかしてたの〜?」

「あ、うん。俺めっちゃ成績悪かったから、頭がいい人に見てもらいたいなって思って頼んだんだよ」

「「ふ〜ん? へ〜?」」

「な、なんだよ!?」


 桑原が救世主から一転し、長谷川と同じく明らかに怒っている様子で近づいてくる。

 なんで俺、桑原にも殺されかけてるの!? もうよく分からないんだけど!?


「は、春樹! 助けてくれ!!」

「ヒューヒュー」

「春樹ぃぃぃいいい!!!」


 見事に春樹には無視され、その後俺の姿を見た者はいなかったという。

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