第32話 全部俺のせいなのに
みんなで勉強会を行った次の日、俺は朝早くに学校へ向かった。
理由は無論、
「これで学校でも避けられたらどうしよう……」
間違いなく、立ち直れずに不登校になってしまうだろう。
好きな人に嫌われる。想像するだけでも胸が苦しくなってくる。
「でも、避けられ続けるのも嫌だ」
胸が苦しい。
吐き気が抑えられない。
……それでも、このままじゃ嫌だ。
俺は重い足取りで必死に歩き、朝のショートホームルームが始まる二十分前に学校に到着した。
(野本さんは……まだいないか)
野本さんが在籍している教室を見てみると、まだ二人組の女子しか来ていなかった。
少し時間が経ったらまた来よう、と思い自分のクラスに引き返そうとしたその時、
「あ、あの!」
教室の中にいた女の子の一人に話しかけられた。
「
「……はい、そうですけど……」
俺を呼び止めた女の子とは顔見知りではないが、その子はかなり近い距離まで深刻そうな顔で近づいてくる。
「あの……
「…………え?」
「私、花蓮ちゃんと同じクラスになってからずっと仲良くしてるんですけど、昨日からずっと元気がないっていうか、深刻そうにずっと悩み事をしてて……。それでゴールデンウィーク中にデートしたっていう赤峰くんに聞いてみたんですけど……」
こんな知らない女の子にまで広まっているとは思わなかった。
……でも、野本さんが元気がないように見える? 悩み事をしている?
元気がないように見えるのは分かるけど、悩み事ってなんだ……?
「ごめん。何があったかは教えられないけど、俺も野本さんに今避けられてるっていうか……そんな感じで何も分からないんだよ。だから……」
「そうですか……。わかりました。ごめんなさい、呼び止めちゃって」
「いえいえ。じゃあ、俺はこれで」
野本さんの悩み事って一体なんなんだ……?
疑問が残ってしまったが、このままここにいても気まずいだけなため一度自分のクラスに戻ることにした。
朝のショートホームルームが終わったらまた来よう。そして屋上に呼び出して、ちゃんと謝ろうと心に決めて。
朝のショートホームルームが終わり、俺は再び二つ隣のクラスである野本さんのクラスにやってきた。
廊下から中を覗くと、野本さんは珍しく机に突っ伏していて、その様子をクラスのみんなが心配そうに見ていた。俺はそんな空気に我慢できず、他クラスでもお構いなしに入って野本さんの机の前まで向かう。
「野本さん、ちょっといい?」
いつもならこのクラスの男子たちは野本さんに近づく男子を徹底的に排除すると聞くが、今日は野本さんの様子がおかしく元気がないように見えるからか大人しい。
「……ん? …………え!? 赤峰くん!?」
「「「「…………あれ?」」」」
元気がない。深刻そうに悩み事をしている。そう聞いていたが、野本さんは全然元気だった。なんなら俺が避けられている、と思ったのも間違いなのかもしれない。
そんな彼女を見て、クラスのみんなは驚くと同時によかったと安堵のため息をつく。
「どどどどうして赤峰くんがここにいるの!?」
「いや、ちょっと野本さんと話がしたいなって思っただけで……今、大丈夫?」
「う、うん! 大丈夫大丈夫!」
野本さんにしては珍しく取り乱していた。
俺が話しかけた時もすごく肩が震えていたし、やはりあの時のことがまだ頭の中に残っているのだろうと結論づける。
屋上に着くと、少し落ち着いた様子の野本さんが口を開いた。
「……赤峰くん、話ってなに?」
「あのゴールデンウィークの時のこと、ちゃんと謝りたくて。本当にごめん。俺のせいで野本さんが怖い目に……」
「もういいって! 私が付いていっちゃったのが原因だし、赤峰くんがそんなに責任を感じなくても大丈夫だよ!」
「……でも、俺があの時長い間トイレに行かなきゃ野本さんは連れてかれずに済んだ。だから俺が悪いよ」
「そ、そんなことないよ!」
野本さんは優しいな。
全部俺が悪いのに。俺の責任なのに。
「――だって私、赤峰くんに感謝してるもん!」
「…………え?」
「あの時、赤峰くんが助けに来てくれなかったら私、どうなってたか分からなかった。だから赤峰くんが助けに来てくれて、すごく嬉しかったんだよ」
「野本さん……」
そんな風に思ってくれてたのか。
あれ……なら、どうして……?
「じゃあなんで、LIMEとか電話の返事くれなかったんだ?」
「……え? あ、えっとそれは色々考え事してたら返事ができなくて……」
「そっか。よかったぁ……俺、てっきり嫌われちゃったのかと」
「赤峰くんを嫌いになるなんて、有り得ないよ! 本当にただ考え事してたら返事ができなかっただけで……本当にごめんなさい」
「大丈夫だよ。やっとこれでモヤモヤが晴れた気がするし、中間テストに向けて勉強頑張らないと」
「……そうだね」
そうして話は終わり、俺と野本さんは並んで教室に戻った。
今までずっとあの一件でモヤモヤしていたが、今日晴らすことができてようやく勉強に身が入るだろう。
あの日からずっと
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