第31話 放課後、仕組まれた勉強会?
放課後になり、
「やっぱり俺、嫌われちゃったのかな」
最後にLIMEをしたのは二人で遊んだ日。
俺が『今日は怖い思いをさせちゃって本当にごめん。俺でよければいつでも力になるから、いつでも連絡して』と送って、それから未読が続いている。
「ほんと最悪……」
今日はこの後、
しかし約束はもうしてしまったため、急いでカフェに向かったのだった。
「ごめん! 遅くなった!」
「全然大丈夫だよ〜。早く勉強しよ〜」
「……遅い」
「よーっす」
「なんだよ、
「あー、なんか面白そうだから来てみた」
てへっ☆、と舌を出す春樹。
正直めちゃくちゃ気持ち悪い。
「……で、どうしてこの並びなんだ?」
春樹たち三人が座っているのは、四人がけのテーブル。そして俺から見て左側の席には奥から春樹と桑原が座っていて、右側の席には奥に長谷川が座っている。長谷川の隣に俺が座る、という並びになっていた。
普通なら男女で分かれて座ると思うんだが……。
「
「なるほどな……。全然嫌ではないけど」
「……あっそ。早く座れば?」
「お、おう……?」
俺は言われた通り長谷川の隣に腰を下ろす。
すると目の前に座っている二人、春樹と桑原がニヤニヤしながらこちらを見てきた。
「え、なに?」
「「なんでもないよ〜」」
絶対なんかあるやつだ……。
長谷川は妙に緊張している気がするし、春樹と桑原が何かを仕組んでいるに違いない。
「はいはい。じゃあ、勉強するか」
「「「はーい」」」
一斉にみんなが開いたのは『数学B』の教科書。『数学B』は結構難しい。将来理系に進もうと考えている人がとる教科だが、俺もこの科目にはかなり苦しめられている。
「やっぱり数Bが一番難しいよな。二人とも数学は苦手なの?」
「「苦手〜」」
「俺も苦手!」
「頼むから脳筋は黙っててくれ」
「ひどっ!?」
「でも数学が苦手なら、どうして理系に進もうって考えてんだよ」
「文系の科目の方が分からないから〜」
「……
「なんとなく!」
「マジで脳筋、お前は帰れ」
「なんで!?」
長谷川と桑原の二人に質問したのだが、相手にされず暇になっている春樹まで入ってきた。こいつは普段から勉強してないみたいだし、教えることは一つもないだろう。
「えっと……今回の範囲は数列だけど、具体的にどこが分からないとかある?」
「「全部」」
「おう……まじか……」
全部分からないとなると、教える側としても結構厳しい。俺もまだ完璧に理解できていない場所は少しあるが、一から教えるとして、果たしてテスト当日までに間に合うだろうか。
「公式に当てはめるだけの問題もあるけど……」
「「わからない!」」
「……まずは公式から覚えようか。何回か使えば自然に覚えられると思うし」
「「はーい」」
すると二人は教科書に載っている公式をスラスラとノートに写し始めた。そんな二人の様子を見て、春樹も感化されたようで公式をスラスラとノートに写し始める。
俺も勉強をするためにここに来ているため、当然自分の勉強を始める。
それから数時間黙々と勉強をしては教え、勉強をしては教えを繰り返し、もう夜も遅くなってきたため解散となった。
春樹と桑原は電車で、俺と長谷川は歩きなため、駅の改札口で二人と別れてそれぞれ帰路に就く。
「んー! 久しぶりにこんな勉強したから疲れたわ」
「なんだよ、長谷川って普段から勉強とかしないのか?」
「当たり前でしょ。どうして毎日のように勉強しなきゃいけないのよ」
「意外と楽しいぞ? 勉強するの」
「うっわ……気持ち悪い」
「ひでぇな! もう教えてあげないぞ!?」
「う……ごめんなさい」
帰り道、俺と長谷川は途中まで同じ方向なため並んで歩いていた。
外はもう既に真っ暗で、街灯を頼りに長谷川の歩くスピードに合わせて歩を進める。
「でもまさかお前に勉強を教える日が来るとはな。一年の時じゃ絶対有り得ないな」
「そうね……。ねぇ、赤峰」
「ん? なんだよ?」
長谷川は急に歩みを止め、こちらをじっと見つめてくる。
可愛らしい顔が街灯に照らされ、頬がほんのり赤く染っているのがわかった。
「次の土曜日、空いてる?」
「空いてるけど……遊びに行こ、とか言うなよ? さすがに勉強したい」
「言わないわよ! その……また赤峰の家に行きたいなって思って……」
「え、なんで俺の家!?」
また一緒にゲームしたいってこと!?
俺もうボコボコにされるの嫌だよ!?
「勉強、教えてほしいの」
「あー、なんだ勉強か」
「勉強以外に何があるのよ……」
「まあそれならいいけど、別に俺の家じゃなくてもよくないか? 今日のカフェとか、図書館も周りにあるし」
「カフェだったら色々な人の声が入って集中できないのよ。逆に図書館は声出せないじゃない」
「確かに……」
それなら俺の家でやった方がいいか。
「わかった。じゃあ土曜日、俺の家で勉強するか」
「……え、いいの?」
「おう。桑原と春樹も呼ぶか?」
「…………だ」
「ん?」
「……やだ」
や、だ……?
「二人でがいい」
斯くして、今週の土曜日は俺と長谷川の二人で、中間テストに向けた勉強会をすることになったのだった。
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