第23話 念願の二人きりで②
ペンギンカフェを見つけると、
俺はそんな野本さんを早歩きで追いかける。
ペンギンカフェは一階のペンギンの水槽の前にある。カフェの前にはテーブルがある他、ペンギンの水槽前にソファーがあるため、ペンギンを見ながらも飲食ができるようになっていた。
メニューを見てみると、何らかの形でペンギンが飾られているデザートが多いようだ。どちらかというとティータイムでのデザートやドリンクが多いが、ランチで食べられそうな軽食もある。
「すごいな……これならペンギン好きな野本さんがはしゃぐのも頷ける」
「でしょ! 可愛いでしょ!」
「野本さんは何食べるの?」
「うーんとね……『ペンギンおにぎりドリンクセット』と『ペンギンパフェ』と『ペンギン和ッフルソフト』!」
いや、めっちゃ食べるやん。しかも全部ペンギン関係のやつ。
「
「じゃあ俺は『ペンギンフロート』と『ペンギン和ッフルソフト』にしようかな」
「『ペンギンフロート』! 私も飲もうか迷ったんだけど、これ以上は厳しいんだよね……」
「なら、俺のやつ一口飲む?」
「…………え?」
完全に無意識だった。
野本さんがほんのり赤く染めた顔でこちらを見上げてきて、俺もそれで気づいたのだ。
間接キス。
そうだよな、さすがに俺なんかと間接でもキスは嫌だよな。
「ご、ごめん! そんなつもりはなくて、もう一本ストローもらってさ!」
「……あ、うん。ありがと……」
野本さんが照れた顔、初めて見た。
手を唇に当てて、未だにほんのり顔を赤く染めて視線を逸らしている。
俺の心はかなり傷ついたが、今まで見てきた中で一番可愛い顔を見れてよかった気もする。
「それでもいい? 野本さん」
「……うん」
野本さんはコクリと首を縦に振り、レジに向かう。俺も野本さんに付いていき、会計を済ませるのだった。
そして注文した物が全てできあがり、俺たちのテーブル席はペンギンの食べ物、飲み物で埋め尽くされていた。
まず『ペンギンおにぎりドリンクセット』。このペンギンおにぎりにはペンギン型の海苔がのっており、野本さんは「可愛い可愛い!」と連呼しながら写真をたくさん撮っている。
次に『ペンギンパフェ』。これはブルーのパインゼリーの上に、ミックスベリーと小笠原の塩バニラソフトがのったパフェだ。上にはペンギンのクッキーがのっている。
これも野本さんが「可愛い可愛い!」と連呼しながら写真をたくさん撮っている。
次に『ペンギン和ッフルソフト』。これはもちもちの白玉にペンギンサブレののった和スイーツだ。みたらし、黒蜜きなこ、あずきからトッピングを選ぶことができ、俺は黒蜜きなこ、野本さんはあずきを選んだ。
これも野本さんが…………(以下略)。
最後に『ペンギンフロート』。これは青い海をイメージしたブルーハワイ味のソーダの上に、ペンギンが泳ぐ姿を表した氷のペンギンがのっている。
そしてストローが二本入っており、野本さんは「可愛いな……」と少し恥ずかしそうに写真を撮っていた。
「赤峰くんっ! 一つお願いがあるんですけど、いいですか!?」
激しかったシャッター音が鳴り終わり、食べ始めようとしたその瞬間、野本さんがいつもより数段階大きな声で呼び止めた。
「……え、うん。別にいいけど、どうしたの?」
「その……一緒に写真、撮りませんか?」
好きな人に上目遣いでお願いされるの、反則すぎて無理。めっちゃ可愛いやん。なんですか、天使ですか?
「もちろん! 俺からもお願いします!!」
――パシャリ。
「……ありがと。後で撮った写真送っとくね」
「こちらこそありがとう。めっちゃ嬉しいよ」
撮った写真、絶対に家宝にします。なんならスマホの背景に…………やっぱりそれはキモイから止めておこう。
写真を撮り終え、俺たちは少し恥ずかしい気持ちになりながらもテーブルの上にある物を食べ始めたのだった。
「美味しかった〜! もう満足だよ〜」
「本当にすごく美味しかった。今日は誘ってくれてありがとう、野本さん」
「ううん! こちらこそ今日は来てくれてありがとう!」
今がチャンスなのではないだろうか。
水族館。二人きり。デート終盤。
すごく楽しかった。今日のおかげで、野本さんのことをもっと知りたいって思った。自分のことをもっと知ってほしいって思った。
――告白をするなら、絶対に今しかない。
このチャンスを逃せば、次にいつ告白をできるかわからない。それなら今、ここで…………。
――キュルルルル。
緊張か、それとも冷たい物をたくさん食べすぎたせいか、お腹が急に痛くなってきた。
最悪だ。せっかくの告白チャンスだったのに。
「……ご、ごめん。少しトイレに行ってきてもいいかな?」
「いいけど、大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。この辺で待ってて。すぐ戻ってくるから」
「うん、わかった」
最悪だ。最悪だ。最悪だ。
どうしてこんな大事な時に!
今なら告白できると思ったのに!
「なんでいつも俺は……」
中学生の頃もそうだった。
好きな人がいたのに、結局チキって告白なんてできなかった。
…………本当に、最悪だ。
***
スマホで先程撮った写真を嬉しそうに見ながら祐也のことを待っている
そしてその二つの黒い影はニヤリと口角を上げてどんどん近づいていき、後ろから花蓮の肩をポンと叩いたのだった。
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