第12話 告白、しようと思う
「
やっぱり遅かったぁぁぁあああ!!!
俺――
しかしかなり……否、この世の終わりとも思えるほどに絶望していた。
どうする? なんて答える? 成り行きとはいえ一応付き合ってるけど、俺の本命は
「付き合ってる……けど――」
「そうなんだ! すっごくお似合いだと思うよ!」
がーーーーーーーーーーーーーん!
今までの経験上、過去一辛い。
これ絶対脈ナシじゃん……。
「あ、ありがとう……あはは……はは」
「いいな〜、私も彼氏欲しいんだよね〜」
「野本さんはす、好きな人とかいないの?」
「好きな人? さぁ、どうでしょう」
……え、なにその反応。
いるの!? いないの!? どっち!?
「んー、いない?」
「正解! 私に好きな人はいませ〜ん」
「そう、なんだ……」
野本さんに好きな人はおらず、自分はなんとも思われていないと知り、ホッとしたと同時に悲しい気持ちになる。
「でもすごいよね。一年生の頃は二人ともすごく仲悪そうだったのに、今では恋人なんて」
「あはは……そうだね」
もう告白できる雰囲気なんてものはどこにもない。
俺と長谷川が付き合っていると知られている以上、告白してしまえば二股野郎というレッテルを貼られる。さらに脈ナシ。
今すぐここから逃げ出したい。この世からいなくなりたい。
「あ、そういえば話があるんだよね? 何かな」
「それは……」
「ん?」
可愛らしく首をちょこんと傾げる野本さん。
どうしよう。告白はできないし、何を話せばいいんだ……。
「ごめん。本当は久しぶりに野本さんと二人でゆっくり話したかっただけなんだ」
「そっか。私も赤峰くんと久しぶりにゆっくり話せてよかったよ。そろそろ時間だし、戻ろっか」
「……うん」
そうして俺と野本さんは並んで談笑(俺は相槌を打ってただけだけど……)しながら、教室へと戻ったのだった。
「お、祐也どうだった?」
教室に戻ると、すぐに春樹が駆け寄ってきた。
ニヤニヤしてる。絶対からかう気だ。
「……」
「まさかお前、チキったのか?」
「うるせ」
「はぁ……これだからヘタレは」
「黙れチャラ男」
「ひっど! てか祐也、お前本当に言わなかったのかよ。俺があそこまで言ってやったのに」
「仕方ないだろ。長谷川とのことがバレてたんだ。それに脈ナシだし……」
「脈ナシでもアタックしろよ! 当たって砕けろの精神だ!」
「俺はお前が羨ましいよ……」
脈ナシでもアタックなんて、できるわけがない。
当たって砕けろの精神で告白なんて、できるわけがない。
春樹の言った通り、俺はチキンだ。本当はさっき告白するつもりだったのに、脈ナシだと分かった瞬間にはもう告白をする気がなくなっていた。ビビったんだ。
「なんでだよ。告白してみないと分からない。まだ試合は始まってない!」
「間違いなく始まったらすぐ終わりだ」
てか、なんでお前は俺にそこまで告白させたいんだよ。俺が振られるところをみたいのか? ふざけやがって、このイケメンクソ野郎。
と心の中で春樹に対して毒づいていると、ふとあることに気が付いた。
「あれ、長谷川はまだ来てないのか?」
「ん? ああ、そういえばまだだな。いつもならもういる時間だけど、ホームルーム五分前になっても来ないのは珍しいな」
「だよな……」
昨日重い空気になってから気まずいのは確かだが、さすがに心配はするものだ。
長谷川がいつも一緒にいる
「おやおや、ついさっきまで学年一人気な野本さんのことばかり考えていたのに、今では学年で二番目に人気な長谷川さんのことですか。いやー、本当に祐也は女たらしですなー」
「他校の女子と付き合ってるくせに、色んな子に可愛い可愛い言ってる奴だけには言われたくないな」
「えっと、それって誰のこと?」
「お前以外に誰がいるんだよ!!」
そもそも俺が女たらしだったら、この世の男子は全員女たらしになるぞ?
だって俺、普通に毎日のように話す女子なんてこの間までいなかったし。最近になって長谷川とはまともに話すようになったけど。
「俺はそんな最低な男じゃない。祐也みたいに可愛い女の子とばっかりつるんでないからね」
「おい、語弊を生む言い方やめろ。まるで俺が女子に対して差別してるみたいじゃないか」
「実際してるだろ?」
「してねぇよ!!」
なんだよこいつ、いつもより数倍はからかってくるじゃないか。本当に腹立つ。
春樹のせいで周りからの評価がどんどん下がってくんだよな。それでイケメンな春樹はなぜか株が上がる。イケメンってだけで。イケメンクソ野郎のくせに。ふざけやがって。
「赤峰、ちょっといい?」
朝のショートホームルームが始まる直前、後ろからそんな風に声をかけられた。
声がした方に振り向くと、そこには長谷川と桑原が立っている。
「……いいけど、ホームルーム終わったらな」
「うん、わかった」
今日の長谷川の声はいつもとは違って、どこか元気がないように聞こえた。
やはり昨日、俺がキスしなかったのが原因だろうか。謝らないとな。
朝のショートホームルームが終わり、俺は長谷川に連れられて屋上にやって来た。
最近よく屋上に来るな、なんて心の中で呟くと同時に長谷川が口を開く。
「あの、昨日はごめんなさい」
「……え? なんでお前が謝るんだよ。俺が悪かったんだ。本当にごめんな」
「ううん、全部あたしのせい。何もかも……あたしが悪かったの」
「……長谷川?」
長谷川の様子が明らかに変だった。
ずっと俯いており、目を頑なに合わせようとしない。それに声が震えており、今にでも泣き出しそうな感じだ。
長谷川は一度深呼吸をし、俯いていた顔をようやく上げた。
「…………赤峰、短い間だったけどあたしのわがままに付き合ってくれてありがとう。本当に……本当に夢のような時間だった。だからもう、あたしに付き合ってくれなくていいよ」
おい、それって……。
「別れよう、赤峰」
長谷川は明らかに無理をして笑顔を作るが、その笑顔から涙が頬を伝い地面に落ちる。
どうして、そうなるんだよ……。
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