第2話 同類
絡まれている女の子がこちらを見て、ニヤリと笑みうかべた。
「あー、そうですね。あなた達が強いと証明してくれるなら、入りましょうか」
「え?・・・強い?」
彼女は突然変な事を言い出した。
「そうです、強いです。ボクはか弱い乙女なので、守ってくれる人が近くにいたらいいなって思うんですよ。だから、先輩方が強い事を証明してくれたら安心してサークルに入れるんですよ」
「も、もちろん、俺らすげー強いよ?ほら、普段から鍛えてるからさ、な?」
「そうそう、そこら辺のヤツらには絶対に負けないよ?君をしっかりと守れるよ?」
1人の男はその場で筋肉を自慢するように力こぶを作り、もう1人はその場でシャドーボクシングをする。彼らなりの強いアピールをしているのだろう。
・・・・・・彼らはどれだけ強いのだろうか?
「ふふ、確かに強そうですね。でも、それだけじゃ信用出来ないのでそこの彼と戦ってくれると分かりやすいかと」
そう言って彼女は俺を指さした。
いきなりの事でビックリした。そりゃそうだろう。突然として飛び火がこちらに来たのだ。驚かない方がおかしい。
しかし、だけど、それ以上の感情が俺の心を包み込む。
「・・・誰あれ?知ってる?」
「いや、分からん。でも、楽勝じゃね?弱そうだし」
「ま、アイツには悪いが犠牲になってもらうか」
「そうだな。ま、後で適当にケアすりゃいいしょ」
「で、アイツを倒せばいいの?」
「はい、そうです。あ、でもちょっと待ってください」
早速こちらに向かってこようとしている2人を彼女は静止させた。
「ん?何?何かあるの?」
「ええ、ここでは狭いですし場所を変えようかと。あと、大きな怪我してもいけませんから、多少の安全を確保したいと思いまして。えっと・・・・・・これ、用意できますか?」
「え、ああ、いけるよ。今すぐってのは無理だけど、知り合いに頼めば・・・」
「では、お願いします」
何かを紙に書き、男に渡す。何かを準備させるようだが、何をするのだろうか?
てか、俺の同意なしに話が進んでのだが・・・・・・?
「では、また明日。この時間に、この場所にて。行きましょう」
「え、ああ・・・・・・」
彼女は俺の手を取り、引っ張っていく。
彼女が勝手に俺を指名して、勝手に約束をして、俺は一言も喋らずにその場を抜けた。
知り合いでもないんだけど?なんかほんと色々勢いで決まった感じ。
彼女が引っ張ってきた先は学食。
「はい、これ。一応お詫びですね」
「え、ああ、ありがとう」
「いえいえ」
「それで、少し話したいのですがお時間ありますか?」
彼女から手渡されたのは食券。唐揚げ定食と書かれている。
食事まで勝手に決められてしまった。まぁ、唐揚げ好きだから別にいいけど。
「お時間があるも何も、説明をして欲しいね」
「お時間があるようで良かったです」
俺たちは定食を受け取り、席に着く。昼真っ只中という時間帯を少しだけ過ぎた学食は人がまばらだった為に、楽に席を探せた。
「では、いただきましょう」
彼女は手を合わせる。
「いやいや、説明は?」
「先に食べましょうよ。冷めますよ?」
「はぁ、まあいいか。食い終わったら説明してくれよ?」
「はい、もちろんです」
とりあえず食べることにした。
知り合って短い間だが彼女はマイペースだということが分かった。どんな状況でも自分の思い通りに行動できるタイプなのだろう。
ゆっくりと食事をしている様子を見ているとそう思う。
しばらくしてから食べ終わり、「ごちそうさまでした」と手を合わせる。
「では、まずは自己紹介でもしましょうか」
「そうだな」
「ボクの名前は
「・・・俺は
「結城君・・・紺那君・・・うん、紺那くん。改めてよろしくお願いします」
「んで、なんで俺を巻き込んだ?」
「か弱い美少女が絡まれているんです。
そんなものだろうか?いやそんなはずはあるわけが無い。
目が合うまでは、見て見ぬふりをして去ろうとしたのだが?
「それにしては巻き込み方酷くないか?」
「なんの事でしょう?」
わざとらしく、あざとく彼女は首を傾げてみせる。
「いや、戦わせるって・・・・・・」
「ボクは君の望みを叶えようとしただけですよ?」
「・・・・・・っ!」
その彼女の顔に俺は震える。ニコリと笑っているだけなのに、どこか・・・そう、狂気じみたものを感じる。
すぐさま口から否定する言葉を吐くことは出来ただろう。だけど、それを許されない雰囲気が彼女にはあった。
「・・・どうしてそう思った?」
「ボクは分かりますから」
「なんだよそれは」
「そういう事にしておいてください」
「・・・・・・分かったよ。でも、何で戦わせようとする?」
1番気になることを聞く。戦うことが俺の望みだとしても、それを彼女が叶える理由はなんだ?
人助け?いや、俺の望みはそんな人助けされるような望みじゃない。
「決まってるじゃないですか。ボクが見たいから」
「なんだよ・・・それは」
人の望みを叶えるのは、自身の望みを叶えることだと彼女は言っているように聞こえる。いや、しかし、その顔はそんな聖人じみた考え方の顔ではない。
自身の欲に忠実な、どこか恐ろしさを感じる。
「あんた、さてはヤバいやつだな?」
「はい、そうですよ。近くを通りかかった自分を恨んでください」
俺の言葉に笑顔で肯定する彼女。
俺は今、どんな顔をしているだろうか?ビビっているのだろうか?嫌な顔でもしているのだろうか?
いや、自分がよく分かっている。
「ふふ、いい顔ですね」
「そりゃ、どうも」
鏡なんて必要ない。目の前に同じような表情をしている人がいるのだから。
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