第3話 街灯下と本当の強さ

 ラルムでは常に、街灯が道を照らしている。

 家から離れるに連れて、少年の歩みにぎこちなさが現れてきた。リュックも、家を出る時より重そうに見える。後ろから聞こえてくる、いくつかの足音。

「よう、ティア」

 勢いよく少年の肩に手を回した彼に、ティアは怯えているのだった。

「…うん」

「声小さ〜」

 彼は小馬鹿にしたように笑うと、彼と一緒にいた2人の子供も笑った。

 彼の名前は、ダムア。

 いつも男子と女子を1人ずつサイドに抱えていて、3人で少年のことをいじめるのだ。

「体だけじゃなくて、声も小さいのかよ」

 冷やかしのように、サイドの女子が言った。

 ティアは、周りの同世代と比べると小柄だ。

「今日も地球のキーホルダーつけてるぞ。地球に人間がいるとか言って、いるわけねえだろ」

 彼の笑い声が、少年の耳を殴る。少年の瞳から、涙が溢れ、頬を伝って地に落ちた。

「…いるもん!」

 涙が溢れる瞳で、はじめて少年は真っ直ぐ彼を見た。

「証拠もないのに、何言ってんだよ!」

 少年が口答えしたことに、彼は腹を立てた。

「いないっていう証拠もないのに…」

 少年は、苦しそうに呟いた。かじかんでいるはずの少年の小さな手は、強く拳を握りしめていた。

「こいつ…っ」

 彼は勢いよく少年を押し倒した。

  彼にいくら蹴られても、少年は何もしない。うずくまって、ただ静かに、大粒の涙を流していた。


 

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