第5話 謎

「やっぱりあれは……そうだったとしか思えない」

 年若い使用人の疑問に答えるように、年長の使用人――メアリが話し始めた。

 聞き耳まで立てておいて何だが、メアリが話に乗って来たのは意外であった。

 メアリは、私が生まれる前からここで働いているベテランの使用人である。だが、担当している仕事が炊事場や掃除なので、あまり私とは関わることがない。

 しかし、寡黙ではあるが、真面目な働き者という印象は持っている。

 そのメアリが、諫めるどころか、自ら口を開いているのだ。

 この件に関して、メアリには、何かしら思うところがあるのだろう。



「エリザベート様がお体を悪くして、一年ほど療養で地方に行っていたことがあってね……」

「えっ! そんなにお体が悪かったんですね……今はとってもお元気そうなのに。でも、聖女様が一年も地方に行ってしまって、大丈夫だったんですか?」

「あの頃はまだ先代の聖女様がご存命だったから。でも、聖女様が一年も療養しなければならない大病をしたっていうのに、あまり大騒ぎにはならなかったね。不思議なことに」

「それって……もしかして、病気ではなかったということですか?」

 朧気ながら、私にも記憶があった――母が不在だった時の記憶が。

 そして、カタリナの年齢を考えると、母が不在だった時期と、カタリナが生まれた時期はちょうど重なるのではないだろうか?




 

 

 

 



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