第5話 謎
「やっぱりあれは……そうだったとしか思えない」
年若い使用人の疑問に答えるように、年長の使用人――メアリが話し始めた。
聞き耳まで立てておいて何だが、メアリが話に乗って来たのは意外であった。
メアリは、私が生まれる前からここで働いているベテランの使用人である。だが、担当している仕事が炊事場や掃除なので、あまり私とは関わることがない。
しかし、寡黙ではあるが、真面目な働き者という印象は持っている。
そのメアリが、諫めるどころか、自ら口を開いているのだ。
この件に関して、メアリには、何かしら思うところがあるのだろう。
「エリザベート様がお体を悪くして、一年ほど療養で地方に行っていたことがあってね……」
「えっ! そんなにお体が悪かったんですね……今はとってもお元気そうなのに。でも、聖女様が一年も地方に行ってしまって、大丈夫だったんですか?」
「あの頃はまだ先代の聖女様がご存命だったから。でも、聖女様が一年も療養しなければならない大病をしたっていうのに、あまり大騒ぎにはならなかったね。不思議なことに」
「それって……もしかして、病気ではなかったということですか?」
朧気ながら、私にも記憶があった――母が不在だった時の記憶が。
そして、カタリナの年齢を考えると、母が不在だった時期と、カタリナが生まれた時期はちょうど重なるのではないだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます