第4話 会話
「けほっ、けほっ……」
ドアを開けた途端、埃が舞い上がり、私の喉を刺激した。
離れとは名ばかりの、いわゆる物置である。
実は私は、離れに来る前に、母のところへ寄っていた。どうして愛着のある部屋をカタリナに譲り、離れに移動しなければならないのか、納得できる理由を母の口からちゃんと聞きたかったからだ。
逃げられると思ったが、意外にも母は直接私に理由を教えてくれた。
――聖女はいつ、いかなるときも、民の心を知り、民に寄り添わなければならない。自分一人の力で離れをきれいにし、庶民の生活を知れ。
母の言い分はこのような感じだった。私は瞬時に嘘だと見破ったが、あえて指摘せず、今回はこのまま引き下がることにした。
私は生まれてこの方、家事をほとんどやったことがない。
だからいきなり掃除をしろと言われても、やり方がわからない。そもそも、離れには掃除道具らしきものもなかった。
(まずは掃除道具を調達しないと)
私は建物の外に出た。
外に出てしばらく歩くと、使用人たちの話声が聞こえてきたので、掃除道具のことを尋ねようと声がする方に足を向けた。
「カタリナ様ってどういう方なんですか? その……エリザベート様にそっくりですよね」
年若い使用人が、年長の使用人に聞いていた。
今、二人の前に歩み出て、話しかけられる雰囲気ではなくなった。
いや、正直に言おう。私はこの二人の会話が気になり、物陰に身を潜め、じっと聞き耳を立てていたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます