君に捧げた歌

@despair_uta

君に捧げた歌

「あなたとは、もうやっていけない」


 君が最後に言い残した言葉はこれだった。どこで僕は間違えたのだろうか。


 君と出会ったあの日を、僕は一度も忘れてはいない。全身に火花が迸る感覚を、君がいなくなった今でも覚えている。


 だんだんと離れていく君を、僕はなんとか引き留めようと、必死に考えて、考えて、考えて……結局君を失ってしまった。


 僕はどこで間違えたのだろうか。裏目の出たという事実が、動こうとする僕の足を掴んで離さない。


 君と初めて会ったとき、君が初めて僕の歌を聴いてくれた時。まだ、夏の日差しが強く僕らを照り付けたあの日。


 あの時歌った歌を僕は口ずさむ。今はただ、悲しみが溢れるだけだ。


 君との出会いは、必然ではないと思っている。あの時、僕があそこで歌っていたのは、本当に偶然なんだ。


 運命だと思った。そう言い聞かせることで、寂しさを少しでも紛らわそうとしている自分がいる。


 こんなことを考えていると、ずっと頭の中から君が消えなくて、僕はこれから先の人生を考えられなくなる。


 やるせない気持ちを、僕は歌にのせて歌うことしかできない。だから、君のために歌うよ。たとえ苦しくても、いつか風に乗ってあの夏の日の君に届くことを願っているから。


「楽に、なりたいなぁ……」


 無意識に呟いていた。今までのこと、これからのこと。考えるのをやめたとき、今まで重くのしかかっていた、後悔と自責の念が消えた気がした。


 君への『好き』をもし消せたなら、楽になれるのだろうか……。


 綺麗な曲線を描いた少し柔らかい耳。透き通るように綺麗で笑うと細くなる愛おしい目。誰よりもまっすぐで、僕のことを一番に考えてくれた君の心。君のすべてを僕は愛せていたかな。


 君のすべてを、僕が知ることができたら、次に会うときは、ちゃんと君を愛せるかな。


 君に捧げた歌。一生忘れない。


 —————今まで、ありがとう。

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