限界中年の超級チート成り上がり転生記 ~願望にとりつかれた無能な独身男が ≪無自覚無双≫ で異世界最強まで上り詰める!!~
第146話 橋と言えるのか、これは…… ていうか、本当に渡れるのか、コレ??
第146話 橋と言えるのか、これは…… ていうか、本当に渡れるのか、コレ??
「えぇと……。率直に訊く。二人とも、覚悟はあるか?」
ようやく言葉を取り戻して発した第一声がこれだ。
無理もない。
目の前に横たわっているのは巨大な渓谷。
かなり深くて広い大渓谷だ。
まぁ、あれだ。以前に見たドンキル大渓谷より規模こそ小さいが、底には流れの速そうな川が流れている。これは落ちたら助からないかも。
それはよい。まだ想定の範囲内だ。
本当の問題はそれじゃない。橋の方だ。
渓谷には粗末な橋が掛けられている。
というか、これはアレだ。橋と呼べるものなのか?
厳密に言えば、ロープがそれぞれの岸辺を往復するように掛けられているだけだ。ロープの下にはスキー場のリフトのような座るための板が備え付けられている。どうやら人力でロープを回していくことでリフトとして機能するようだ。
まずは管理人と思われる男数人が近くにいるので話を聞こうじゃないか。
「あー、すまないが、これで対岸に渡れるんだよな?」
「お前さん達は旅の者か? 石碑目的だな?」
「石碑のことを知っているのね?」
「あぁ、もちろん。俺たちはその集落の人間で、ここの管理を任されているんだ」
「ここを渡るのは怖いよーー」
おっと、既にユエが怖がっている。
「それよりも、ここは以前からこれで対岸に渡っているのか? 随分と勇気の要る交通手段のように見えるが……」
「それなんだが……。あそこをよく見て欲しい」
男が指さした方を見る。すると、崖の際にコンクリート製のような土台の一部のような物体が目に入った。
「あれは……。もしかしたら『橋』の跡なのか!?」
「実はそうなんだ。つい最近になって、橋が崩れてしまって困ってるんだ。仕方なくこうして臨時の通行手段を用意したのはいいけど、これでは物資も運びにくいし観光客も来にくいし、とにかく不都合ばっかりで」
「それは残念な話ね。それなら橋を新しく架け替える予定はあるのか気になるわ」
「ぜひそうしたいところなんだが、そうも行かないのが問題なんだ」
「それはお金の問題なのか?」
「資金も重要だが、それよりも技術面だな。この大きくて深い渓谷に橋を架ける技術なんて現代には残っていないさ」
あー、なるほど。思わず幅数十メートルはあろうかという深めの渓谷をのぞき込む。
よくよく思い返せばサルキアの橋も簡易的な橋だったな。ロープに木の板を括りつけたような貧弱な造りだったことを不意に思い出した。
「もし橋が架かれば大万歳という訳だな」
「そりゃもちろん。だが、これが現実だ。もし三人とも向こう岸にこれを使って渡るのであれば通行料、合わせてしめて3千クランを払ってほしい。むろん我々もこの金額が安いとは思っていない。だが、こんな通行手段でも大変な苦労があったし、それに維持管理や将来的な橋の建築費用のことも考えるとこの金額でも雀の涙さ」
「それはそうだな。じゃあ、これを……」
「だ、旦那。これは5千クラン金貨じゃないか」
「釣りはいらないぞ。有効に活用してくれ」
「ありがとう、ありがとう」
男は涙を流しながら喜んでくれた。まぁ、金に困っている訳ではないし、この男が嘘を言っていないのも分かる。
こうして通行料を支払った我々は一人ずつ順番に橋を渡ることになった。
記念すべき一人目は何を隠そう、この俺だ。
毒見役ということでまずは俺が先に渡ることにした。
ロープの下に垂れ下がっている粗末なイスに腰かける。
まるで公園のブランコに座った気分だ。
男が対岸の仲間に合図して一緒に力を合わせて縄を動かしていく。
こうして十分ほどかけて無事に対岸までたどり着いた。
別に高所恐怖症という訳では無いが、これはけっこう怖い。
次にノエル、最後にユエが何事も無く渡り終えた。
良かった良かった。
まぁ、俺の空間魔法で一っ飛びすればこんな七面倒なやり取りをしなくて済んだが、使わなかったのにはいくつか理由がある。
もちろん今の時点では2人には内緒にしておきたかったのが大きいが、他に “目撃者” が出ないとも限らない。
しかも状況確認をする際に男から色々と事情を聞いてしまった手前、これでお金を払わないで引き返すのは後味が悪い。さらに男は石碑の集落の人間だと言う。となれば、最悪、引き返したはずの我々と鉢合わせということになりかねない。
ということで、消極的な消去法の結果、とくに変な目立った行動をしないことに決めたのだ。
しかしそれも過去の話。
今はとにかく前へ進もう。
そんなことを考えていると、いよいよ目的の集落が見えてきた。
何だかワクワクしてきたぞ!
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