第145話 土石魔法習得の道のりは遠い。まさに文字通りの意味で
思いもよらず2ランクアップを果たした俺。
実にすがすがしい気分だ。まさに爽快そのもの。
しかもランクアップしてC級になったという点がミソだ。
言わずもがな、このC級というのは魔物の討伐依頼を単独受注できるランクなのだ。E級やD級とは決定的に違う。
これで晴れて一人前の冒険者になれた…… ということでいいんだよな?
「やったわね、サイ!!」
「良かった。本当におめでとう、サイさん!」
ギルド会館を出てもまだ二人が興奮した様子で祝福してくれる。
ありがたいことだ。
「いやー、良かった。サンローゼとは違って変な嫌がらせも無かったしな」
「本当にそれよね」
そう。俺はサンローゼのギルド会館では理不尽な査定により、昇級が遅れに遅れていた。功績は十分だったはずだが、なぜかギルドが硬直していてランクアップを素直に認めてくれなかったのだ。
まぁ、これには裏の事情があるのだろう。
とても表には出せない類の何か嫌な感じの。
とはいえ、今さらそれを言ったところでどうにもならない。
余計なことを思い出して嫌な気分を味わうよりかは、今はノエルとユエと一緒に喜びを分かち合うじゃないか。
今夜は豪勢にいくぞ!
さて、もう一つ俺の考えを述べておくと、これで昇級の心配は当分しなくてよくなった。これが何よりも大きい。
というのも、俺としては討伐依頼を受けられるかどうかというのが重要で、B級やA級に上り詰めるというのはさほど重要ではないからだ。
むしろC級に留まっておくのが一番潰しが効くというか、諸々考えた時の都合がいいだろう。なにしろB級以上は数も少なく目立つ存在だ。断りにくい理不尽な強制依頼も受けざるを得ないだろう。
ということで、俺の昇級欲はこれで十分に満たされた。
まだまだ使える魔法の数が少ないから俺の本当の実力はそれほど高くないだろうな。
そんな俺の心を見透かしたようにノエルが質問してくる。
「ギルドでの用事も済んだことだし、そろそろ土石魔法の石碑を見たいわ!」
「確かにそうだな。すっかり興奮して忘れかけていたが、ミナスでの目的はそれだったな」
「土石魔法、私も欲しいなぁ。習得できるかなぁ?」
「う~ん、どうだろうな。運が良ければ三人ともゲットできるはずなんだが……。それより問題がある」
「えっ、どんな問題なのかしら?」
「その場所が遠いんだ」
「「あー」」
「確かにミナスで土石魔法というのは正しんだけど、厳密に言えば目的の場所が郊外なんだ」
「そうなの……」
急にユエがしょぼんとし出した。この顔も可愛いな。
「だから、ちょっとした準備が必要だ。途中にある大きな川を渡らないとだし、ここまでの旅よりも少しだけ大変かもしれないな」
とくに川の部分が厄介だ。
「ちょっと様子が分からないから自信が無いけど、おそらく1日でたどり着けると思う。念のために食料やら何やらここで調達しておこう」
「そうね。サイに賛成するわ! そうと決まれば、さっそく買い出しに行くわよ!!」
こうしてノエルの鶴の一声によってまずは買い出し。さらには追加で武器の整備などを鍛冶屋で行った後、俺たちは石碑を目指して西の方向に歩み始めた。旅の途中でさらに小さな旅をするような不思議な感覚だ。
空間収納のお陰で以前のように宿を貸切る必要が無くなったのは助かる。
◇
ふむ……。
確かに道幅こそ細いが舗装はしっかりしている。あまりにも人通りが少ないと道が草だらけになって魔物も頻出するが、こういう道にはそれほど出没しない。
そして俺の予想を裏付けるように何事もなく、川までたどり着いた…… のだが、ここでとんでもないことが発覚した。
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