第134話 いよいよ新たな旅が始まる。今度の目的地は……


 思いがけずノエルとユエに再会してしまった。


 しかも彼女らネコ姉妹はこともあろうか、何と俺と一緒に旅をしてくれるときたもんだ。本当にこんなことが起こるのか。


 何かすごいことになってきたな。

 ものすっごくワクワクしてきたぞ。


 「そう言えば、サイが目指している旅の目的地はどこなの?」


 「ランドコールという場所があるんだが、聞いたことはあるか?」


 「いいえ、これまで一度も聞いたことがないわ。そこが目的地なのかしら?」


 「ひとまずな。聞いたことが無いと言うことは、やっぱり知名度の低い場所なのかも……。えっと、そこにいる『伝道師』とやらに用があるんだ」


 「でんどうし?」

 ユエが口を挟む。


 「そう、伝道師だ。俺も詳しくは知らないが、どうやら魔法やスキルについてよく知っているらしい。その方にあって色々と情報を得ようと思っている」


 「へえー、ちょっと興味あるわね。いいわ。まずはそこまでお供しましょう」


 「場所は遠いのかな?」


 「う~ん、そうだな。どちらかと言えば遠いかも。ここから200キロほど離れている場所みたいだから」


 「時間はあるし、問題ないわね。ところで、行くのはここだけなのかしら?」


 「もちろん他にも寄るところがあるぞ。俺が考えているのはミナスとラティアスという二つの街だ。もしかするとマサンドラにも立ち寄るかも」


 「そこには何があるの?」


 「良い質問だ! 実はだな……」


 さすがにギルド会館でわざわざ大きな声で話せるようなレベルの内容ではない。そこで二人に近づいてもらって、耳元でささやく。


 「実は異なる属性の魔法を習得したいと思っていて……。具体的にはだな、ミナスで土石魔法、ラティアスで電撃、あとマサンドラで氷結といった具合だ」


 「ち、ちょっと待って、サイ。そんな情報、一体どうやって!?」


 「それは俺が地図を手に入れたからだな。地図屋で」


 「サイ、あなたあんな高価な地図を買ったの?? すごいわね」


 「まあ、本当に魔法が習得できるなら安い買い物さ。現に俺は放水魔法と空間魔法を手に入れたんだぞ」


 「空間魔法!? すごい!」

 「えぇー、ウソでしょ!!」


 「し、静かに!」


 「なるほど、かなり面白い話になってきたわね。それでいつ出発するの?」


 「そうだな。実は今ある拠点を引き払おうと思っていて……。だから、これから何日間かで準備を進めて、それが終わり次第出発でいいかな?」


 「そう。あの宿をついに引き払うのね。今度はどこに住むのかしら?」


 「どこだろう。俺にも分からないな、それは。まぁ、良さそうな場所があったら一緒に住もう」


 ……と思わず口走ってしまったが、よくよく考えてみるとこれは大いに誤解を招く表現だ。


 「あっ、いや。二人も一緒に旅をするだろう?」


 「もちろんよ。どこにでも付いてくわよ。ねえ、ユエ?」


 「うん、付いていく」


 「えっうえっ……」


 「ちょっと、サイ、どうしちゃったの! いきなり泣き出して」


 「大丈夫?」


 「……大丈夫。俺は大丈夫だ……」


 思いがけず完全に涙腺が崩壊しまった。だって、二人の『どこまでも付いていく』という言葉を聞いてしまったのだから。こんなことってあるんだろうか。俺に付いていきたい人がいるだなんて。本当に良い女だな、二人とも。


 もしかすると、異世界に来た疲れやら何やらも溜まっていたのかもしれない。


 こうしてしばらく年甲斐もなく泣き続けた後、俺は復活した。何だか色々と吹っ切れたような気がする。この世界に来てから今までになく晴れやかな気分だ。


 さて、さっそく旅の準備を始めるとするか。今度は一人旅ではない。三人一緒だ。楽しい旅路になることを祈ろう。





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