第12話 初めてのスキルを欲するも、そう容易くないという現実を知る


 さて、どうしたものか。

 この遺跡から発掘されたという『遺物』の板切れを改めてよく見てみる。


 板は額縁のような見た目だが、絵画が収まる部分におそらくパズルと思われる正方形の木片が数十ほど散りばめられている。


 個々の木片は裏についたポッチ状の取っ掛かりが碁盤の目のようなレール状の溝に上手い具合にはまり込んでいる。それぞれの木片を動かすことで並び替えができる仕様のようだ。


 この木片の文字がうまく意味の通る文章になれば、自身がもつドクロの能力(?)が自動的に発動して、あわよくば何らかの魔力なりスキルなりを習得できる公算だ。


 このパズルを解けるかどうかというのが今回のミッションの肝となる。


 さっそく、木片をずらしていく。

 派遣とはいえ、一応プログラマーの意地を見せてやる。


 まずは組み合わせの種類を計算して総当たりで試していく……。


 予定だったが、木片の位置関係の都合上、そんなに簡単ではなく、結局、適当に動かしていくのが関の山。


 無為な時間だけがすぎていく……。


 ええ~い。

 やめだやめ。


 思わずベッドに放り投げる。


 しかし大金を払ったうえ、自身の仮説が証明できないのは何というか足の裏の米粒のようで気持ちが悪い。


 しかたない、またやるか。


 ひたすらガチャガチャと木片を左右に上下に動かしていく。


 ダメだ。

 らちが明かない。


 そもそも古代文字が読めないので、意味を成す文章になっているのかどうかさえ分からない。


 はぁー。

 思わずため息が漏れる。


 結局、数時間が経過して深夜になっても進展はゼロ。

 まぁそりゃそうだよな。

 所詮しょせんはただの人だったことをすっかり忘れていた。

 戦闘火焔魔法がちょっとばかり使えるだけで調子に乗っていたが、とくに中身が変わった訳ではないのだ。


 投げやりになりながら触っていたときに悲劇が起こった。




 パキッ!



 軽快な音を立てて、触っていた木片が取れてしまった。


 あぁ。


 時すでに遅し。


 しかし全てが手遅れかと思ったが、捨てる神あれば拾う神ありとはよく言ったものだ。


 発見してしまったのだ。

 木片の裏に掘られていた模様の一部を。


 間違いない。

 これは魔法陣の一部だ。


 作戦変更。

 木枠の一部を壊し、すべての木片を取り外していく。


 やはりそうだ。

 個々の木片の裏側には模様が掘られている。


 単なる絵合わせなら俺にだってできるぞ。


 これが最後のラストピース。


 ゆっくりと慎重に置いてみる。

 完成した。


 その瞬間、ピポン!と頭の中で音がした。


「スキル 身体強化を取得しました」


 やった!


 予想通りだ。

 俺は正しかった。


 木片の表側に書かれていた文字はすなわちダミー。

 おそらく発掘時は意味のない文章を解読できず、結果としてギルドか貴族に魔道具としての価値を見出されなかったに違いない。


「うぉー、いやっほーい。やったぞー。俺はついにやったぞー。ヤッター!!!」

 思わず隣の宿泊客のことなど考えずに雄叫びを上げる俺。


「うっせえぞ!」

 隣からドンドンと壁を叩く音がする。


 何はともあれ、こうして初めてのスキルを手に入れたのだった。

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