第4話
「まさか……ローゼリッタは神と対話ができるのか!?」
「そんな……どうしてローゼリッタさんが!? 聖女である私にだってそんなことはできないのに!」
クラウンとマリンがそろって叫ぶ。
土下座をした体勢のまま無様に困惑した2人をチラリと見て、ローゼリッタは内心でほくそ笑んだ。
(やっぱり知らなかったのね。私が創造主と対話できるのは周知の事実のはずなのだけど)
そもそも、スーサイドボム家が王家の管理すら跳ね除けて枢機卿の地位を守り続けているのは、創造主と話をする異能を代々持っているからだった。
スーサイドボム家の祖先が創造主から地上の監視と監督を任されており、この異能を与えられたのである。
(国王夫妻は……話は聞いていたけれど、そもそも信じていなかったのでしょうね。我が一族の力も、あるいは、神の存在も)
少し離れた場所では、国王が言葉を無くしてパクパクと口を開閉している。その隣では真っ青になった王妃が椅子に崩れ落ちていた。
「私は裁かれるべき罪人です。ゆえに、創造主より罰を賜りたく思います。どうかこの愚かな小娘に神罰をお与えください」
『……いいだろう。その願いをかなえてやる。これまでの神官としての忠勤に免じて一撃で葬ってやろう』
この場にいる全員を置き去りにして、ローゼリッタは創造主と話を進めた。
1人の娘が聖女を虐げた罪を認め、神より罰を与えられようとしている……そんな場面の目撃者となった者達は、息を呑んで目の前の光景を見守った。
『それでは……ローゼリッタ・スーサイドボムよ、これよりお前に罰を与える! 天上より神の火を降らせて、国もろとも消し去ってやろう!』
「はい、どうぞ! 丸ごと全部ふきとばしてください!」
「「「「「えええええええええええええええええええっ!?」」」」」
予想外の事態に、この場にいる全員が叫んだ。
てっきりローゼリッタが神罰を受けるものだとばかり思っていたが……いつの間にか、その渦中に自分たちまで巻き込まれていた。
「ま、待て待て待て待て! どうしてそうなる!? 何故、国ごと消し去られなくてはならないのだ!?」
この場にいる全員を代表して、クラウンが抗議の声を上げた。
「死ぬならローゼリッタだけでいいだろう!? 私達まで巻き込むな!」
『む……「巻き込むな」とは我に言ったのか? 人間ごときが、創造主である我に命令をしたのか?』
「い……いえいえいえっ! 違います、申し訳ございません!」
不機嫌になった創造主の言葉に、クラウンが慌てて謝罪した。
「け、けれど……裁かれるべき罪人はそこにいるローゼリッタただ1人でございます。国ごと焼き払う必要はございません!」
『フム? そんなことを言われてもな……我には誰か1人だけを標的として神罰を与えることなど出来ぬのだが?』
「は……?」
『限界まで範囲を絞り、最小単位で神罰を下したとしても都の1つや2つ、容易に吹き飛んでしまう。創造主である我の力ならば仕方がないことだが』
「そ、そんな……!?」
(驚くのも無理はないわよね。我が家が……いえ、世界中の教会が秘匿している事実だもの)
土下座から顔を上げたローゼリッタは、混乱している元・婚約者を眺めながら苦笑する。
これは一部の聖職者だけが知っている事実なのだが……この世界を創りたもうた創造主は非常に大雑把で繊細さから縁遠い性格だったのである。
創造主が動けば国が滅ぶ。
ローゼリッタにとって、それは自らの命を懸けて国家と刺し違える切り札であった。
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