4.寝起き①




クチュクチュ クチュクチュ


目をゆっくり開けると、冬馬の顔がどアップに映る。こうやって見ると、無造作に整った黒い直毛、パッチリとした二重に整った鼻筋、薄い唇…

…控えめに言ってもかっこいい…

これが私の彼氏、か…

付き合って、随分経つのに実感が湧かない。

その彼氏に抱き締められ、今、口の中を貪られている。そのことを寝起き早々に認識させられる。


「おはよ!みっちゃん、寝顔かーわい、みっちゃんの口ん中、甘いね~」


爽やかな笑顔でペロッと舌を出す。

さっき、かっこいいって思ったの、撤回。

寝起きなのと恥ずかしいのとで頭が混乱する。

というか、させないでよ、朝から!

ベッド横の時計を見ると11時前だった。

もう昼じゃん……

冬馬と付き合ってから、休みはいつもこんな調子だ。

これは本気で改善しないとなぁ。


「ちょっと、冬馬!私の口弄ばないで」


「弄んでないよ~味わってただけだよ?」


「どっちも一緒!それに私の寝顔なんて、恥ずかしいから…見ないでよね…」


とっさに布団を冬馬から剥ぎ取り、頭からかぶった。すると、


「も~みっちゃん、怒んないで、だって気持ち良さそうに寝てるみっちゃん可愛いすぎるんだもん」


子どもみたいに駄々をこね始めた。

っていつものことか……


いつも寝顔、ガン見されるの、いくら冬馬でも恥ずかしいのよ?

自分がどんな緩んだ顔してるか、絶対想像したくない!

しかも、なんで寝てる時にキスするの!

恥ずかしすぎて悶える…


布団の中でぶんぶん首を振る。

簡単には出てこないんだから、いつものようには流されないのよ、私!と思っていた。


バフッ

突然、布団の上から抱き締められた。


「ほんとはね、みっちゃんの寝顔可愛すぎて、襲おうしてたんだよ?でも、まだみっちゃんとイチャイチャしたいし…でも、ちょっとなら良いかなって…ついキスしちゃった、だから、ごめんね?」


~~~!!何が。ごめんね?なのよ!

襲うとか怖いこと言ってる…

絶対、罪悪感とかないでしょ!

そう思いつつ、冬馬の言葉に身体を火照らせる。

ていうか、自分で入っておいてなんだけど、布団があつ"い"……しかも布団ごと抱かれているため、ますます熱がこもる。

早く出たいけど、今出たら、冬馬の思う壺だ。

ますます出たくない!


「も~みっちゃん!ごめんね!可愛いお顔だけ出して?」


もう暑さで限界だった私は顔だけ出して、ムスッとした表情で冬馬を見る。


「別に暑いから出てきただけだもん、冬馬に言われたからじゃないんだから」


「も~みっちゃんは、素直じゃなんだから~お布団にくるまってるみっちゃんもかーわい、顔真っ赤だよ、暑いでしょ?」


「うう…あんたが変なこと言うから…出てこない」


「変なことってなあに?」


「自分の胸の内に聞いてみることね」


「僕、言ってくれないと分かんない、また知らないうちに言っちゃうかもよ?」


「んも……寝顔…可愛い…とか、襲う…とか…」


「全然変なことじゃないじゃん~だって~本当だもん、あっ、もしかして、みっちゃんほんとは僕に襲ってほしいとか?!」


「…ちっ、違う、そんなわけないでしょ!」


「でも、さっきより顔赤くなってるよ?」


恥ずかしさのあまり、とっさに言葉が出てこない。


「これは、布団のせいよ…あと、冬馬が抱いてるから…」


自分で意地張って、くるまってしまった。

完全に自分から出るタイミングを見失った。

自分で自分の意固地に呆れてしまう。


「しょうがない、みっちゃんを布団から出してあげよう」


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